個人事業主でも建設業許可は取れる?要件・手続き・法人化との違いを徹底解説
2025/06/02
建設業界で活動している職人や一人親方の中には、「自分のような個人事業主でも建設業許可を取れるのか?」と疑問を抱いている方が多いのではないでしょうか。
結論から言えば、個人事業主でも一定の要件を満たせば建設業許可を取得することは可能です。しかし、法人とは異なる注意点や必要書類もあるため、正確な知識が必要です。本記事では、個人事業主が建設業許可を取得する際の要件、手続き、メリット・デメリット、そして将来的な法人化を見据えた判断基準まで、詳しく解説します。
1. 個人事業主でも建設業許可は取得可能!
建設業法では、「建設業を営もうとする者は、軽微な工事を除き、国土交通大臣または都道府県知事の許可を受けなければならない」と定められています(建設業法第3条)。この「営もうとする者」には法人だけでなく、個人事業主も含まれます。
したがって、法人であろうと個人事業主であろうと、500万円(建築一式工事は1500万円)以上の工事を請け負う場合には建設業許可が必要になります。もちろん、「元請から建設業許可の写しを求められた」「公共工事の入札に参加したい」といった理由から、実際には500万円以下の工事中心でも許可取得を目指すケースもあります。
2. 個人事業主が建設業許可を取得するための要件
建設業許可には次のような要件が定められており、個人事業主でもこれらをすべて満たす必要があります。
(1)経営業務の管理責任者(経管)
原則として、許可を申請する者本人(つまり事業主自身)が、建設業で5年以上の経営業務の経験を有している必要があります。
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例:個人で5年間建設業を営んできた(確定申告書、請求書、契約書等で証明)
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役員経験や支店長経験でも代替可能なケースあり(要件に注意)
※令和2年の建設業法改正により、一定の補佐人がいれば2年の経営経験でも可能になる特例もあります。
(2)専任技術者
建設業に関する資格または実務経験が必要です。たとえば、電気工事士や土木施工管理技士などの国家資格があるか、学歴・職歴により以下の実務経験年数を満たしている必要があります。
学歴 | 必要な実務経験 |
---|---|
大卒(指定学科) | 3年以上 |
高卒(指定学科) | 5年以上 |
上記以外 | 10年以上 |
※同一人物が経管と専任技術者を兼ねることは、原則として可能です(営業所が1つの場合など)。
(3)財産的基礎(資金要件)
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一般建設業許可:自己資本が500万円以上
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もしくは:500万円以上の資金調達能力の証明
証明資料には、残高証明書、金融機関の融資予約証明などが使用されます。設立間もない個人事業主ではこの証明に苦労することがあります。
(4)欠格要件の非該当
次のような場合には許可を受けられません。
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過去に建設業法違反で処分を受けた
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暴力団関係者と関係がある
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破産手続中で復権していない
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3. 個人事業主が提出すべき主な書類
個人で申請する場合、法人とは異なり、本人名義の書類が中心になります。
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確定申告書の控え(直近5年分)
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開業届(税務署提出済)
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経管・専技の経験を証明する契約書や請求書
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履歴事項全部証明書(法人と異なり不要)
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営業所の使用権を証する書類(賃貸契約書など)
加えて、身分証明書や登記されていないことの証明書(法務局発行)なども必要です。
4. 個人事業主が許可を取るメリット
4-1.許可がもたらす「信頼性」の向上
4-1-1. 許可業者=信用ある業者という社会的評価
建設業許可は、国または都道府県による厳正な審査を経て発行される公的な許認可です。経営業務の管理能力、専任技術者の配置、財務的な安定性、法令遵守体制など、一定の水準を満たした者しか取得できません。そのため、**許可を持っていること自体が一種の「信用の証明書」**として機能します。
特に新規の元請企業との取引においては、許可の有無が選定基準になることも珍しくありません。個人事業主であっても許可を取得していれば、「この人はきちんとした業者だ」と評価されやすくなります。
4-1-2. 元請企業・ハウスメーカーからの受注機会増加
多くの大手建設会社やハウスメーカーは、下請業者に対して建設業許可の保有を条件にしている場合があります。実際、「500万円未満の軽微な工事しか扱わない」という形式上のルールがあっても、実務では「一式工事が絡む」「オプション工事が含まれる」などで金額が超えるケースが多く、許可の有無を求められることが常態化しています。
個人事業主が許可を取得することで、こうした有力企業との取引機会が広がり、下請から元請への脱却を図る足掛かりにもなります。
4-2. 「法令違反リスク」の回避
4-2-1. 無許可営業は重大な建設業法違反
建設業法では、500万円(建築一式工事は1,500万円)以上の工事を請け負う場合、建設業許可が必要とされています。これを超える工事を無許可で行った場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があり、さらに営業停止命令や指名停止の対象にもなり得ます。
実際、元請側が「この工事は許可対象ではない」と判断しても、発注内容に変更が出て最終的に金額が超えることは多々あります。金額の読み違いや現場追加工事などにより、知らぬ間に違法状態となるリスクがあるのです。
4-2-2. トラブル時の責任逃れが難しくなる
無許可業者が工事を行い、何らかの施工不良や事故が発生した場合、元請側や施主が「そもそもこの業者に任せるべきではなかった」と責任を追及することがあります。許可を取得していれば、契約・施工の正当性を一定程度主張できるため、トラブル時の法的立場も安定します。
4-3. 融資・補助金・公共支援のチャンスが広がる
4-3-1. 金融機関からの評価向上
銀行や信用金庫などの金融機関は、融資審査の際に建設業許可の有無を重視する傾向があります。許可を取得している業者は、「継続的な売上がある」「一定の事業規模と体制を整えている」とみなされ、事業計画の信頼性が高く評価されやすくなります。
特に、個人事業主として設備投資や車両購入の融資を受けたい場合、許可の取得は大きなアドバンテージとなるでしょう。
4-3-2. 補助金・助成金の対象となることが多い
各自治体が実施している中小企業支援策や、国の補助金制度(小規模事業者持続化補助金、ものづくり補助金など)でも、建設業許可の取得を要件とする場合があります。
また、BCP(事業継続計画)や経営力向上計画等の支援制度においても、許可を持っていることが申請条件・加点要素になることが多く、制度活用の幅が格段に広がります。
4-4. 「将来の法人化」へのステップアップ
4-4-1. 許可取得をきっかけに経営基盤を整備
個人事業主として許可を取得するためには、営業所の確保、帳簿・契約書類の整備、財務状況の把握、身分証明・納税証明の取得など、法的・制度的な要件を整える必要があります。これらの準備は、そのまま法人化を視野に入れた基盤整備にも直結します。
また、経営業務管理責任者や専任技術者の要件確認は、法人に移行した際にも同様に必要となるため、早めに許可要件をクリアしておくことで、スムーズな法人移行が可能になります。
4-4-2. 法人化後の許可「引き継ぎ」が容易に
個人名義で許可を取得していれば、将来的に法人化する際には「建設業許可の承継(引継ぎ)」という手続きを経ることで、再度ゼロから申請する必要がなくなる場合があります。
ただし、一定の要件(営業所、役員構成、専技の継続性等)を満たす必要があるため、個人の段階から許可を持っておくことで「法人化時の申請負担軽減」というメリットも得られるのです。
4-5. 「公共工事の受注」や「経営事項審査」への道が開ける
4-5-1. 経営事項審査の受審が可能に
公共工事の入札に参加するためには、「建設業許可」に加えて「経営事項審査(経審)」の受審が必要です。これは、事業の健全性や施工能力を点数化する制度で、建設業許可を持っていなければ受審資格がありません。
個人事業主でも経審を受けることは可能であり、地方自治体によっては一定の金額以下の公共工事であれば個人でも入札参加が可能な場合もあります。
4-5-2. 指名願い・工事格付け制度の活用
兵庫県や神戸市など、多くの自治体では「指名願い」や「格付け制度」により発注対象業者を選定しています。これらに応募する際も、建設業許可の有無が「最低限の参加資格」とされていることがほとんどです。
民間だけでなく公共市場に進出するためにも、許可の取得は第一歩なのです。
5. 法人との違いと将来的な法人化の検討
(1)個人事業主のままでは経営事項審査が受けにくい
公共工事を請け負うためには経営事項審査(経審)が必要ですが、自治体によっては「法人であること」を応札条件としている場合もあり、個人では事実上不利になることがあります。
(2)相続・事業承継の観点で不利
個人事業主は事業=個人の財産であるため、死亡時に事業が断絶するなど、継続性に乏しいとみられがちです。
(3)法人化によるメリットも大きい
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節税(給与所得控除、役員報酬の分割等)
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信用力アップ(取引先・金融機関の印象がよい)
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法人名義での契約が可能に
そのため、許可取得をきっかけに法人化を検討する個人事業主も少なくありません。
6. 行政書士に依頼すべきか?自分でやるべきか?
自分で申請する場合の注意点
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書類不備で差し戻されることが多い
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経験年数や財務要件の証明に高度な知識が必要
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審査期間の遅れや許可拒否のリスク
行政書士に依頼するメリット
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法的要件のチェックと立証資料の整理を代行
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書類作成から提出までを一括対応
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不許可リスクを最小限に
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専門的アドバイスが得られる(将来の法人化も含め)
費用は事務所にもよりますが、概ね15万円~25万円程度が相場です。
7. まとめ|個人事業主でも建設業許可は取れる!
建設業許可は、法人だけのものではありません。個人事業主でも正しい手続きと要件を満たせば取得可能です。むしろ、信頼性の向上や業務拡大、将来の法人化を視野に入れれば、早期に許可を取っておくことは大きなメリットになります。
ただし、個人事業主には特有の提出書類や証明方法があり、手続きが複雑になりがちです。申請ミスを防ぐためにも、経験豊富な行政書士への相談を検討してみてはいかがでしょうか。
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建設業許可手続きセンター
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