建設業許可に不可欠!「経営業務の管理責任者」とは?その要件と注意点を徹底解説
2025/05/25
「経営業務の管理責任者」とは何者か?
「経営業務の管理責任者(以下、経管)」とは、建設業法上、建設業の許可を取得するために必要とされる“経営経験を有する責任者”のことです。
建設業の経営に関する実務経験が一定年数以上あり、企業の経営面に直接的に関与していたことが要件とされています。経管の存在は、会社が単なる資本金や書類だけの空虚な存在ではなく、実体のある事業者であることを示す証明でもあります。
なぜ経営業務の管理責任者が必要なのか?
建設業は、公共工事をはじめとした安全性や信頼性が極めて重視される産業です。したがって、「どんな経営体制の会社が建設工事を請け負うのか」は、行政としても慎重に審査したいポイントです。
経管制度は、過去に建設業の経営を実際に担った人物が会社にいることで、トラブル時のリスクを減らし、健全な工事遂行を確保するという狙いがあります。
経営業務の管理責任者の要件とは?
要件の概要(令和2年10月の制度改正後)
【要件1】常勤の役員等に「経営業務の経験を有する者」がいること
対象者:
以下のいずれかの立場で、建設業の経営業務に原則5年以上従事していたことが必要です。
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建設業を営む個人事業主本人
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建設業を営む法人の役員(取締役またはこれに準ずる地位)
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法人の使用人として経営業務に従事(支店長・営業所長等)
※これらの経験は、在籍証明や職務内容証明書、契約書・請求書などの実績資料で裏付ける必要があります。
🔹【補足】「取締役に準ずる地位」とは?
令和2年10月の改正で経営業務の管理責任者制度は廃止されましたが、代わりに、「常勤役員等(またはそれに準ずる地位)」が建設業の経営業務に従事した経験を有していることが、許可要件となりました。
ここで言う「準ずる地位」には、以下2つの制度的パターンがあり、要件が明確に異なります。
【パターン①】役員に準ずる地位としての「6年以上」要件
(家族経営の実質的経営者・番頭格など)
📌 概要:
「法人の役員でなかった者」であっても、事実上、役員と同等の立場で6年以上にわたり建設業に係る経営業務に従事していた者は、「役員に準ずる地位」として経験年数にカウントされる可能性があります。
✅ 要件:
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過去6年以上、法人の経営業務に実質的に従事していたこと
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「取締役でないが、役員と同等の裁量・責任を持っていた」と客観的に認められる者
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典型例:創業者の家族、専務的な実力者、いわゆる“番頭格”の使用人など
✅ 認定に必要な証拠:
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組織図や社内規程による権限の明示
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工事契約・資金調達・人事等の意思決定履歴
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関与していた建設業務の契約・帳票類・日報など
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※あくまでもイレギュラーなケースを想定しているため、これがあれば大丈夫といったものはありません。
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【パターン②】取締役会設置会社の執行役員等が認められる場合(5年以上)
(「取締役に準ずる地位」=執行役員・業務執行取締役)
📌 概要:
取締役会設置会社においては、「執行役員」などが、取締役会の決議の上で、取締役会もしくは代表取締役の委任を受けて役員直下の地位で建設業の経営業務を5年以上執行していれば、「取締役に準ずる地位」として認められます。
✅ 要件:
以下すべてを満たす必要があります。
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取締役会設置会社であること
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建設業に係る業務執行権限が、取締役会または代表取締役から正式に委任されていること(委任状・会議録などで証明)
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その立場で5年以上継続して業務執行していたこと
✅ 認定に必要な証拠:
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取締役会議事録または代表取締役の委任状
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業務執行内容を示す規程・契約書・役職辞令等
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執行役員規程、役員会議への参加記録など
❗ 実務上の注意点:
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「執行役員」と名乗っていても、委任を受けていなければパターン②には該当しません
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「番頭」として長年経営業務に携わっていても、立証できなければパターン①は認められません
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自社が「取締役会設置会社」かどうかをまず確認し、それに応じてどちらのルートで証明すべきかを判断することが極めて重要です
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✍ まとめ:準ずる地位=2つの制度を正確に理解せよ
「執行役員」や「家族経営の番頭格」の方が経営業務経験者として認められるかどうかは、年数だけでなく、制度的な位置付けと書類での裏付けが全てです。
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6年要件は、取締役でなくても「実質的に経営に関与していたか」が焦点
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5年要件は、会社の制度上「建設部門に関して法的に権限委任されていたか」が焦点
【要件2】経営体制としての整備(意思決定・統制の仕組み)
形式上の肩書きや一人の経験に依存せず、法人全体として経営業務を適切に管理できる体制が整っていることが求められます。具体的には:
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経営経験者が取締役や準ずる地位にあること
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執行機関(取締役会など)による意思決定と報告体制が整っていること
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経営管理体制に対する内部規程・業務フローなどが整備されていること
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◆ 経験が浅い者でも就任できるケース:「補佐的経験者」による体制
令和2年改正では、「補佐的立場の経験者」にも門戸が開かれています。これは、建設業の経営業務の経験が2年以上である者であっても、一定の条件を満たせば、経営業務体制の一翼を担えるという制度です。
🔹【補佐人をつけ体制を整えることで認められる者の要件】
◆ パターン①
▶ 建設業で2年以上の経営業務経験 + 他業種での役員経験(合計5年以上)
✅ 要件構成:
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建設業における経営業務の経験が2年以上
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+ 建設業以外の法人の常勤役員として経営業務に従事していたこと
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両方合わせて5年以上ある場合
これは、他業種での経営経験がある者が、建設業でも2年以上経営業務に関与していれば、体制構築を要件に責任者としての適格性を認めるという緩和措置です。
🔍 想定される人物像:
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グループの子会社の建設業者の役員としては2年しか経験がないが、グループ他業種の取締役を歴任している人物
◆ パターン②
▶ 建設業で2年以上の経営業務経験 + 役員の直下で経理・財務・労務等に従事(合計5年以上)
✅ 要件構成:
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建設業における経営業務経験が2年以上
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+ 同一建設業者において、役員(代表取締役等)の直下の地位で、経理・財務・労務等に関与した実績があること
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両方合わせて5年以上ある場合
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このパターンは、取締役としては5年に足りないが、経営業務に関する中核的な補助業務を役員に近い立場で行っていた者を対象とした制度です。
🔍 想定される人物像:
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役員としては3年目だが、その就任前に総務部長として役員の直下で3年間、原価管理・給与計算・契約審査などを担当し、同時に取引銀行との折衝を行っていた人物
※上記2種類のケースでは補佐人の選任が必要となります。
◆ 補佐人制度の位置づけ
補佐人制度は、建設業の経営業務経験が5年に満たない常勤役員等を「経営業務を管理する体制の中心者(旧・経管的役割)」として認めるための例外的制度です。
つまり:
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本来5年の経営業務経験が必要なところ
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経験が2年以上5年未満である役員に対し
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補佐人(経理・労務・経営業務の専門部署での経験5年以上の者)を配置し
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かつ組織的な支援体制が整っていれば
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その役員を「経営業務を管理する体制の中心者」として認めることができる
というものです。
◆ 補佐人の定義と必要要件
補佐人になれるのは、次のような者です
✅ 以下の専門部署で、5年以上の経験を有する者
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経理部門
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人事・労務部門
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経営企画・経営管理部門
いずれかまたは複数の分野において、専門的な職務に従事し、相応の判断・管理業務を担っていた者が対象です。
補佐人は、必ずしも役職者である必要はありません。総務課職員といった立場でも、職務実態により認定されます。
また、一人の方が複数の部門の経験をお持ちの場合は、その一人の方が複数部門の保佐人をかけることが可能です。
❗重要:補佐人単独では建設業許可は取れない
補佐人は、あくまで「5年未満の経験しかない常勤役員」を補助するための制度上の要件です。
そのため、補佐人単独で経営業務の管理責任者として認定されることはありません。
よくある勘違い:「社長=経管」とは限らない!
「代表取締役が建設業未経験だけど、自分は社長だから経管でOKでしょ?」
――このような相談を受けることがありますが、大きな間違いです。
経管は、建設業の経営に「実際に携わっていた」という証拠が求められます。たとえば他業種(飲食店やIT企業)の経営者では、この条件を満たせません。
そのため、役職や肩書きよりも「過去の建設業に関する実績」が問われます。
経管がいない!そんな時はどうすれば?
経営業務の管理責任者が確保できない場合、以下のような選択肢があります。
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建設業の経営経験を有する人を役員として迎える
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経験年数が足りない場合は、時間をかけて実績を積む
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新制度の「補佐人+体制整備」による許可取得を目指す
行政書士に相談することで、どのルートで許可取得が可能かを分析し、実現可能な方針を立てることができます。
実務上の注意点
✅ 在籍証明や職務内容の書類化が必要
経管としての経験は、単なる口頭の申告では認められません。具体的な証拠書類が必要となります。たとえば:
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経歴証明書
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登記簿謄本(役員在任の証明)
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工事契約書・請求書・納品書など(実務関与の証拠)
これらの書類を揃えられなければ、どんなに実績があっても経管としては認められません。
経管は「維持」が重要!変更時も届出が必要
せっかく許可を取っても、経管が退任した場合には速やかに後任の確保と「変更届」が必要です。後任がいないと許可の更新すらできないリスクがあります。
そのため、常に「経管の後継者候補」を社内で育てておくことが経営戦略上重要です。
まとめ:経管は建設業の“屋台骨”
建設業許可を取得する上で、経営業務の管理責任者は欠かせない存在です。しかしその要件はやや複雑で、実務経験や証拠書類の整備が不可欠です。
令和2年の制度改正により、体制による補完も認められるようになりましたが、いずれにしても会社としての信頼性と経験値の証明が不可欠です。
「経管がいないから無理だ…」と諦めず、まずは制度を正しく理解し、最適なアプローチを選ぶことが、建設業許可取得の第一歩となります。
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