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社長が引退したら建設業許可はどうなる?事業承継・世代交代で許可を引き継ぐ方法

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社長が引退したら建設業許可はどうなる?事業承継・世代交代で許可を引き継ぐ方法

社長が引退したら建設業許可はどうなる?事業承継・世代交代で許可を引き継ぐ方法

2026/09/04

建設業を長年経営してきた社長が引退し、息子や従業員などの後継者へ会社を引き継ぐ場合、「今持っている建設業許可はどうなるのか」と不安に思われる方も多いのではないでしょうか。

法人の場合、社長が交代したからといって、直ちに建設業許可がなくなるわけではありません。しかし、社長自身が経営業務の管理責任者等や営業所技術者等として建設業許可の要件を担っている場合には、退任によって許可要件を満たせなくなる可能性があります。

また、同じ親から子への事業承継であっても、法人の代表者を交代する場合と、個人事業を引き継ぐ場合、別法人へ事業を譲渡する場合などでは、建設業許可に必要となる手続きが異なります。

そのため、事業承継を考える際には、会社の株式や財産を誰に引き継ぐかだけでなく、「建設業許可を維持するために誰がどの要件を担うのか」についても、社長が退任する前に確認しておくことが重要です。

本記事では、社長の引退や親から子への世代交代を予定している建設業者の方に向けて、社長交代による建設業許可への影響、後継者に必要な準備、事業譲渡や相続などにおける建設業許可の承継制度について、順を追って解説します。

建設業許可手続きセンター (行政書士こうべ元町事務所)

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目次

    第1章 社長が引退したら建設業許可はどうなる?

    1-1 法人なら社長が交代しても建設業許可はなくならない

    法人で建設業許可を取得している場合、代表取締役である社長が引退して別の人が社長に就任しても、それだけを理由に建設業許可がなくなるわけではありません。

    建設業許可を受けているのは社長個人ではなく、その法人だからです。そのため、例えば父親が代表取締役を退任して息子が新たに代表取締役へ就任する場合でも、法人自体が同じであれば、改めて建設業許可を新規で取得する必要はありません。

    ただし、代表者の変更については、建設業許可上の変更届が必要となります。また、ここで注意したいのが、引退する社長が単に代表取締役であるだけでなく、建設業許可の要件となる「経営業務の管理責任者等」や「営業所技術者等」を兼ねているケースです。

    この場合、社長の退任によって建設業許可に必要な要件を満たせなくなる可能性があります。

    したがって、社長の引退を検討する際には、「次の代表取締役を誰にするか」だけではなく、現在の社長が建設業許可上どのような役割を担っているのかを確認することが重要です。

    なお、個人事業主が引退して子などに事業を引き継ぐ場合は、法人における代表者交代とは取扱いが異なります。これについては後ほど詳しく解説します。

    1-2 社長が経営業務の管理責任者等を兼ねている場合は要注意

    社長の引退に際して、特に注意が必要なのが、現在の社長が「経営業務の管理責任者等」となっている場合です。

    建設業許可を維持するためには、経営業務の管理を適正に行うための体制を継続して備えていなければなりません。そのため、経営業務の管理責任者等となっている社長が退任するのであれば、後任として要件を満たす人がいるのかを事前に確認する必要があります。

    例えば、父親が長年社長を務め、その息子が後継者として代表取締役に就任する場合でも、息子が代表取締役になったというだけで、自動的に経営業務の管理責任者等の要件を満たすわけではありません。

    もっとも、後継者である息子自身が要件を満たしていなくても、他の常勤役員が要件を満たしていれば、その者を経営業務の管理責任者等とすることも考えられます。つまり、「次の社長が要件を満たしているか」だけではなく、会社全体として許可要件を維持できる体制になっているかを確認することが重要です。

    社長が引退してから要件を満たす人がいないことに気付いても、すぐに必要な経営経験を作ることはできません。世代交代を予定している場合には、現在の経営業務の管理責任者等が誰なのか、後任候補者が要件を満たしているのかを、できるだけ早い段階で確認しておくことをおすすめします。

    1-3 社長が営業所技術者等を兼ねている場合も確認が必要

    社長が「営業所技術者等」を兼ねている場合も、引退前に後任者を確認しておく必要があります。

    建設業許可では、許可を受けた営業所ごとに、その営業所で営業する建設業の業種に対応した資格や実務経験などの要件を満たす営業所技術者等を置かなければなりません。

    中小規模の建設会社では、社長自身が資格や実務経験を有しており、経営業務の管理責任者等と営業所技術者等の両方を兼ねていることも珍しくありません。このような会社では、社長が引退すると、経営業務の管理責任者等だけでなく営業所技術者等についても後任を確保する必要があります。

    後任については、必ずしも新社長自身が営業所技術者等になる必要はありません。社内に要件を満たす常勤の従業員などがいれば、その者を営業所技術者等とすることも可能です。

    一方、社内に必要な資格や実務経験を持つ人がいない場合には、後任者を育成又は確保する必要があります。例えば、従業員に必要な資格を取得してもらう、実務経験を積ませて将来的に要件を満たせるようにする、すでに要件を満たしている人を外部から採用するといった方法が考えられます。

    特に資格取得や実務経験による対応は、社長の退任が決まってからすぐにできるものではありません。また、実務経験によって要件を満たす場合には、必要な経験年数だけでなく、その経験を証明するための資料を確保しておくことも重要です。

    後任となる営業所技術者等を確保できないまま社長が退任し、許可要件を欠くことになれば、その業種の建設業許可を維持することができません。そのため、後任者がいない場合には、社長の退任時期そのものを見直すことも選択肢となります。

    社長の引退後も建設業許可を維持するためには、「経営面の要件」だけでなく「技術面の要件」についても、誰が後任となるのか、後任がいない場合にはどのように確保・育成するのかまで含めて、早い段階から計画しておくことが重要です。

    1-4 個人事業主の引退は法人の社長交代とは扱いが異なる

    個人事業主として建設業許可を受けている場合は、法人の社長が交代する場合とは考え方が異なります。

    法人の場合、建設業許可を受けているのは法人そのものです。そのため、代表取締役が父親から息子に交代しても、法人が同一である限り、原則として建設業許可そのものはそのまま維持されます。

    これに対して、個人事業の建設業許可は、その個人事業主本人が受けている許可です。そのため、父親が個人事業主として建設業を営んでおり、引退を機に息子が事業主となる場合、単に代表者の名前を父親から息子へ変更するという手続きでは済みません。

    ただし、現在の建設業法には、事業譲渡について事前に認可を受けることにより、建設業者としての地位を承継できる制度があります。したがって、個人事業を親から子へ引き継ぐ場合でも、要件を満たし、適切な時期に手続きを行えば、従来の許可を承継して事業を継続することが可能です。

    一方、承継制度を利用せず、父親が廃業した後に息子が新たに建設業許可を取得する方法もあります。しかし、この方法では父親の許可と息子の許可との間に空白期間が生じる可能性があるため、事業を途切れさせずに引き継ぎたい場合には注意が必要です。

    個人事業の世代交代では、「父親の許可の名義を息子に変えればよい」と考えるのではなく、事業譲渡による許可の承継を利用するのか、新規許可を取得するのかを含め、引退前から承継方法を検討しておくことが重要です。

    1-5 まず確認したい「誰が建設業許可の要件を担っているか」

    社長の引退や世代交代を検討する際、最初に確認しておきたいのが「現在、誰が建設業許可の要件を担っているのか」という点です。

    特に重要なのが、経営業務の管理責任者等と営業所技術者等です。現在の社長がこれらを兼ねているのであれば、社長の退任と同時に後任者が必要になる可能性があります。

    一方、社長は代表取締役であるだけで、経営業務の管理責任者等は別の役員、営業所技術者等は従業員が担当しているという会社もあります。この場合には、社長が交代しても許可要件への影響は比較的小さく、代表者や役員の変更手続きを中心に対応することになります。

    また、複数の営業所や複数の許可業種がある会社では、誰がどの営業所・業種の要件を担っているのかまで確認する必要があります。例えば、後任者が一部の業種については営業所技術者等の要件を満たしていても、他の業種については要件を満たしていないということもあります。

    そのため、事業承継を考え始めた段階で、現在の許可申請書や変更届などを確認し、少なくとも次の点を整理しておくことをおすすめします。

    ・経営業務の管理責任者等は誰か

    ・営業所技術者等は誰か

    ・その人が担当している営業所・許可業種は何か

    ・社長の引退に伴って退任・退職する人はいないか

    ・後任候補者はそれぞれの要件を満たしているか

    社長の引退によって建設業許可に問題が生じるかどうかは、「社長が辞める」という事実だけでは判断できません。

    まず現在の許可体制を把握し、社長の引退後も必要な要件を満たし続けられるのかを確認することが、建設業許可を維持したまま世代交代を進める第一歩となります。

    第2章 建設業許可を維持して世代交代するための許可要件

    2-1 事業承継後も建設業許可の要件を満たす必要がある

    建設業許可を維持したまま世代交代を進めるためには、事業承継後も建設業許可の要件を満たしている必要があります。

    建設業許可は、一度取得すればその後は要件を満たしていなくても更新まで有効というものではありません。経営業務の管理責任者等や営業所技術者等をはじめとする許可要件は、許可を受けた後も継続して満たしておく必要があります。

    そのため、社長の引退に伴って許可要件を担っている役員や従業員も退任・退職する場合には注意が必要です。

    例えば、先代社長が経営業務の管理責任者等であり、営業所技術者等も兼ねていた場合、後継者が社長に就任しただけでは、これらの要件まで引き継いだことにはなりません。それぞれについて要件を満たす後任者を確保する必要があります。

    また、事業譲渡などによる建設業許可の承継制度を利用する場合も、許可だけを切り離して引き継げるわけではありません。承継する側が建設業許可に必要な要件を備えていることが前提となります。

    事業承継というと、後継者の選定や株式・財産の引継ぎなどに目が向きがちですが、建設会社の場合には、それと並行して「承継後の体制で建設業許可の要件を満たせるのか」を確認することが重要です。

    許可要件を満たす人材は、社長の退任直前になって簡単に用意できるとは限りません。世代交代を予定しているのであれば、後継者を決める段階から建設業許可の要件についても確認し、必要に応じて人材の育成や資格取得、採用などを計画的に進めておきましょう。

    2-2 経営業務の管理責任者等を誰にするか

    社長の引退に伴い、経営業務の管理責任者等も交代する場合には、後任者が建設業法上の要件を満たしているかを確認する必要があります。

    一般的な中小建設会社で利用されることが多いのは、建設業に関して5年以上、経営業務の管理責任者としての経験を有する常勤役員等を置く方法です。

    例えば、後継者である息子が父親の会社で5年以上取締役を務め、建設業の経営に携わってきたのであれば、その経験によって要件を満たせる可能性があります。

    また、必ずしも現在の会社だけで5年間の経験が必要なわけではありません。以前勤務していた別の建設会社で役員をしていた期間や、自ら個人事業主として建設業を経営していた期間など、過去の経営経験を合わせて要件を満たせる場合もあります。

    一方、後継者が長年会社で働いていたとしても、単に現場作業や施工管理を担当していただけでは、原則として経営業務の管理責任者としての経験にはなりません。後継者を将来の経営業務の管理責任者等とするのであれば、どのような立場で経営に携わってきたのかが重要になります。

    なお、5年以上の役員経験等による方法のほかにも、建設業に関する一定の役員等に次ぐ職制上の地位における経験を利用する方法や、一定の常勤役員等とこれを直接補佐する者を組み合わせて要件を満たす方法があります。

    そのため、「息子には5年間の取締役経験がないから事業承継できない」と直ちに判断する必要はありません。過去の経歴や社内の人員構成によっては、別の方法で要件を満たせる可能性があります。

    ただし、経営経験があることと、その経験を建設業許可申請上証明できることは別問題です。登記事項証明書だけでなく、過去の建設業許可関係書類や工事実績を確認できる資料などが必要となる場合があります。

    社長の引退を予定しているのであれば、後継者候補の経歴を早めに確認し、「いつから要件を満たすのか」「その経験を資料で証明できるのか」まで確認しておくことが重要です。

    2-3 営業所技術者等を誰にするか

    社長の引退に伴って営業所技術者等も交代する場合には、後任者が許可を受けている建設業の業種について、必要な技術要件を満たしているかを確認する必要があります。

    営業所技術者等の要件を満たす代表的な方法は、建設業法で定められた資格を取得していること、又は一定期間の実務経験を有していることです。

    例えば、一般建設業であれば、許可業種に対応する国家資格を取得している場合のほか、指定学科を卒業した後に一定期間の実務経験がある場合や、原則として10年以上の実務経験がある場合などに要件を満たすことができます。

    そのため、後継者自身に資格がなくても、これまでの実務経験によって営業所技術者等になれる可能性があります。反対に、建設会社に長年勤務していたとしても、許可を受けたい業種について必要な実務経験がなければ、その業種の営業所技術者等になることはできません。

    また、複数の業種について建設業許可を受けている会社では特に注意が必要です。例えば、先代社長が一人で複数業種の営業所技術者等となっていた場合、後任者がそのすべての業種について要件を満たしているとは限りません。一部の業種についてしか要件を満たせなければ、残りの業種について別の営業所技術者等を確保するか廃業するかを選択する必要があります。

    実務経験によって要件を満たす場合には、その経験を証明できるかどうかも重要です。単に「10年以上この仕事をしてきた」というだけではなく、どの期間に、どの業種の建設工事について経験を積んできたのかを、必要な資料によって確認・証明することになります。

    後任者がまだ要件を満たしていない場合には、必要な資格を取得してもらう、将来必要となる業種の実務経験を計画的に積ませる、要件を満たしている従業員を後任とする、外部から要件を満たす人材を採用するといった方法を検討します。

    特に実務経験は短期間で作れるものではありません。社長の引退が数年先であれば、現在の許可業種と後継者候補の資格・実務経験を照らし合わせ、将来どの業種の営業所技術者等になれるのかを早い段階で確認しておくことが重要です。

    また、営業所技術者等は営業所に常勤して専らその職務に従事することが求められるため、原則として工事現場の主任技術者や監理技術者を兼ねることはできません。ただし、一定の要件を満たす場合には、営業所技術者等が現場の主任技術者又は監理技術者を兼ねることができる特例があります。

    そのため、建設業許可を維持するための営業所技術者等を確保できれば、それだけで十分とは限りません。実際に工事を施工するためには、各現場に配置する主任技術者や監理技術者についても考えておく必要があります。

    特に、先代社長が営業所技術者等であると同時に、社内の中心的な技術者でもあった会社では、事業承継を機に技術者不足が表面化することがあります。

    建設業者として継続的に事業を行っていくためには、一人の資格者や経験者だけに依存するのではなく、将来の退職や受注拡大なども見据えて、できるだけ複数の技術者を社内で育成・確保しておくことも重要です。

    2-4 後継者自身が許可要件を満たしている必要はある?

    事業承継の相談でよくあるのが、「息子を次の社長にしたいが、建設業許可の資格や経験がない」というケースです。

    結論からいえば、後継者となる新社長自身が、経営業務の管理責任者等や営業所技術者等の要件をすべて満たしている必要はありません。

    例えば、息子が新たに代表取締役に就任する場合でも、別の常勤役員が経営業務の管理責任者等の要件を満たしていれば、その役員によって経営体制の要件を満たすことができます。

    営業所技術者等についても同様です。新社長自身に資格や実務経験がなくても、要件を満たす常勤の役員や従業員を営業所技術者等として配置できれば、建設業許可を維持することが可能です。

    したがって、後継者について考える際には、「息子が建設業許可の要件を満たしているか」だけで判断するのではなく、承継後の会社全体で許可要件を満たすことができるかという視点で考えることが重要です。

    もっとも、現在は先代社長一人が経営業務の管理責任者等や営業所技術者等を兼ねており、社内に代わりとなる人がいない会社もあります。このような場合には、先代社長が代表取締役を退任した後も、一定期間は取締役として会社に残り、経営業務の管理責任者等を続けるといった方法も考えられます。

    つまり、「社長を交代する時期」と「先代が会社から完全に引退する時期」は、必ずしも同じである必要はありません。

    後継者への経営権の移行を先に進めながら、その間に後継者や他の役員・従業員の経験や資格を整え、建設業許可上の体制が整った段階で先代が完全に引退するという段階的な事業承継も有効な方法です。

    2-5 後継者が要件を満たしていない場合の対応方法

    後継者が経営業務の管理責任者等や営業所技術者等の要件を満たしていないからといって、直ちに事業承継ができないわけではありません。

    前述したとおり、新社長自身がすべての許可要件を満たす必要はないため、まずは社内に要件を満たす役員や従業員がいないかを確認します。

    例えば、経営業務の管理責任者等については、後継者以外の常勤役員が必要な経営経験を有していれば、その者を経営業務の管理責任者等とすることが考えられます。営業所技術者等についても、必要な資格や実務経験を持つ常勤の役員や従業員がいれば、その者を配置することができます。

    社内に要件を満たす人がいない場合には、主に次のような対応を検討することになります。

    ・先代社長に一定期間、役員等として会社に残ってもらう

    ・後継者や他の役員に必要な経営経験を積ませる

    ・従業員に必要な資格を取得してもらう

    ・必要な実務経験を計画的に積ませる

    ・要件を満たす人材を新たに採用する

    特に有効なのが、代表者の交代と先代社長の完全な引退を同時に行わない方法です。例えば、息子を代表取締役にして経営の中心を後継者へ移しながら、父親は一定期間取締役として残り、経営業務の管理責任者等を引き続き担当することが考えられます。

    その間に後継者が必要な経営経験を積んだり、他の従業員が資格を取得したりすることで、許可要件を徐々に次の世代へ移していくことができます。

    一方で、社長の高齢化や病気などにより、このような準備期間を確保できないこともあります。その場合には、社内の人材だけにこだわらず、要件を満たす人材の採用なども含めて早急に体制を検討する必要があります。

    建設業許可の事業承継では、「誰を次の社長にするか」と「誰が許可要件を担うか」を分けて考えることが重要です。後継者が現時点で要件を満たしていない場合でも、会社全体として要件を維持できる体制を作りながら、将来的に後継者へ役割を移していく方法を検討しましょう。

    第3章 親から子への事業承継はどの方法を選ぶ?

    3-1 法人の代表取締役を親から子へ交代する場合

    法人で建設業を営んでいる場合、親から子への事業承継で最もシンプルなのが、現在の法人をそのまま残し、代表取締役を親から子へ交代する方法です。

    この場合、建設業許可を受けている法人そのものは変わりません。そのため、代表取締役が交代しても建設業許可を新たに取り直したり、建設業法上の承継認可を受けたりする必要はありません。

    代表取締役の変更登記を行ったうえで、建設業許可についても代表者や役員の変更に必要な届出を行うことになります。

    ただし、注意したいのは、代表取締役の変更と建設業許可上の要件者の変更は別の問題だということです。

    例えば、父親が代表取締役であると同時に経営業務の管理責任者等となっている場合、息子を代表取締役に変更したとしても、父親が引き続き常勤役員として会社に残るのであれば、要件を満たす限り、父親が経営業務の管理責任者等を続けることも可能です。

    反対に、代表取締役の交代と同時に父親が取締役からも退任して会社を完全に離れるのであれば、経営業務の管理責任者等についても後任者を確保し、必要な変更手続きを行わなければなりません。営業所技術者等を兼ねている場合についても同様です。

    したがって、法人の事業承継では、「代表取締役をいつ交代するか」と「先代社長がいつ役員を退任して完全に引退するか」を分けて考えることができます。

    例えば、まず息子を代表取締役にして経営の中心を後継者へ移し、父親は取締役として一定期間会社に残る。その間に後継者や他の役員・従業員が建設業許可に必要な経験や資格を整えた後、父親が完全に引退するという段階的な世代交代も考えられます。

    法人の場合には、このように代表者交代の時期と建設業許可上の体制変更の時期を調整できることが大きな特徴です。親から子への事業承継を検討する際には、会社の経営権だけでなく、建設業許可を誰が支えるのかについても併せて計画しておきましょう。

    3-2 個人事業を親から子へ引き継ぐ場合

    父親が個人事業主として建設業を営んでおり、その事業を息子が個人事業主として引き継ぐ場合には、法人の代表者交代とは異なる手続きが必要です。

    法人の場合は代表取締役が交代しても許可を受けている法人自体は変わりませんが、個人事業の場合、父親と息子はそれぞれ別の事業主体です。そのため、父親の建設業許可について、単に事業主の名義を息子へ変更することはできません。

    ただし、現在の建設業法では、事業譲渡について事前に認可を受けることで、個人事業主から別の個人事業主へ建設業者としての地位を承継することができます。

    例えば、父親が営んできた建設業を息子へ譲渡し、息子がその事業を継続する場合、事業譲渡による承継の認可を受けることで、父親が受けていた建設業許可を引き継ぐことが可能です。

    もちろん、息子側についても建設業許可の要件を満たしている必要があります。個人事業として承継する場合には、法人のように「父親に取締役として残ってもらい、経営業務の管理責任者等を続けてもらう」という方法をとることはできません。

    そのため、父親の引退時点で、息子自身が経営業務の管理責任者等の要件を満たしているのか、また営業所技術者等について息子自身又は従業員などによって要件を満たすことができるのかを確認しておく必要があります。

    後継者である息子が経営業務の管理責任者等の要件をまだ満たしていない場合には、父親の引退時期を遅らせ、その間に必要な経営経験を積ませるなど、数年前から準備が必要となることもあります。

    また、承継制度を利用するためには、実際に事業を譲渡する前に認可を受ける必要があります。父親が先に廃業してしまい、その後で息子が許可を引き継ごうとしても、同じように承継できるわけではありません。

    個人事業の親子承継では、「父親がいつ引退するか」「息子がいつ事業主になるか」「息子側でいつ許可要件が整うか」「いつ承継認可を受けるか」を一体として考えることが重要です。

    特に、法人の事業承継と比べて先代を役員として残すといった調整ができないため、後継者の育成状況を確認しながら、余裕を持って承継時期を決める必要があります。

    3-3 個人事業を法人化して後継者へ引き継ぐ場合

    父親が個人事業主として建設業を営んでいる場合、事業承継を機に法人成りし、息子を代表取締役とする法人へ事業を引き継ぐ方法もあります。

    個人事業主と法人は法律上別の事業主体であるため、単に法人を設立しただけでは、父親個人が受けている建設業許可が法人へ移るわけではありません。

    個人事業を法人化する場合、建設業許可の手続きとしては、大きく分けて二つの方法が考えられます。

    一つは、建設業法第17条の2による認可を受け、個人事業主の建設業者としての地位を法人へ承継する方法です。

    例えば、父親が個人事業主として建設業許可を受けている場合に、息子を代表取締役とする法人を設立し、事前に認可を受けたうえで、その法人へ建設業を承継する方法です。この場合には、建設業者としての地位そのものが承継されるため、従前の建設業許可を引き継ぐことができます。

    もう一つは、従来から行われてきた法人成りの方法です。父親の個人事業について廃業届を提出し、新しく設立した法人について新規の建設業許可を取得します。

    この方法では、法人は新たに建設業許可を取得することになるため、個人事業主が持っていた建設業の許可番号をそのまま引き継ぐことはできません。

    一方で、一定の要件を満たす法人成りであれば、個人事業主としての工事実績や完成工事高などについて、法人へ引き継いで取り扱うことができる場合があります。

    つまり、「個人時代の工事実績等を引き継ぐこと」と「建設業許可そのものを承継すること」は同じではありません。

    建設業法第17条の2による承継認可を利用するのか、個人事業を廃業して法人で新規許可を取得する従来の法人成りとするのかによって、必要となる手続きや許可の扱いが異なります。

    また、いずれの方法を選択する場合でも、法人側で建設業許可の要件を満たせる体制を整える必要があります。

    例えば、息子を新法人の代表取締役としながら、父親も常勤の取締役として法人に入り、経営業務の管理責任者等の要件を担う方法が考えられます。その間に息子が必要な経営経験を積み、将来的に許可要件上の役割についても父親から引き継いでいくことができます。

    個人事業から法人への世代交代では、単に法人を設立するだけでなく、「建設業許可そのものを承継するのか」「法人で新たに許可を取得するのか」まで検討したうえで、法人設立や父親の引退時期を決めることが重要です。

    3-4 別法人へ事業譲渡する場合

    親から子への事業承継では、現在の会社の代表者を交代する方法だけでなく、建設事業を別の法人へ譲渡する方法もあります。

    例えば、父親が経営するA社の建設事業を、息子が経営するB社へ譲渡し、今後はB社で建設業を続けていくようなケースです。

    この場合、A社とB社は別法人であるため、単に事業を譲渡しただけでは、A社が受けている建設業許可をB社が使用することはできません。

    しかし、建設業法第17条の2による事業譲渡の認可を事前に受けることで、譲渡会社の建設業者としての地位を譲受会社へ承継することができます。

    承継認可を受けた場合には、単に工事や従業員、取引先などを引き継ぐだけではなく、建設業許可を含む建設業者としての地位が承継されることになります。

    ただし、どのような事業譲渡でも建設業許可を承継できるわけではありません。建設業法上の承継制度では、建設業の全部を譲渡することが前提となっているため、一部の許可業種だけを選んで承継するといった利用はできません。

    また、譲受会社であるB社についても、承継後に建設業許可の要件を満たしている必要があります。経営業務の管理責任者等や営業所技術者等を誰にするのかなど、承継後の許可体制を事前に確認しておかなければなりません。

    事業承継の方法として事業譲渡を選択する大きな理由の一つが、承継する資産や負債などを選択できることです。

    合併の場合には、原則として消滅する会社の権利義務を包括的に承継するため、事業承継後に簿外債務や偶発債務などが判明するリスクがあります。一方、事業譲渡では、譲渡する資産や負債などを個別に定めることができるため、後継会社に引き継がせたくない債務を切り離しやすいという特徴があります。

    例えば、先代の会社に長年の取引による債務や保証関係などがあり、そのすべてを後継会社へ引き継がせることにリスクがある場合には、必要な建設事業を選別して譲渡することにより、後継会社へのリスクを抑えることが考えられます。

    もちろん、事業譲渡であればすべてのリスクを排除できるわけではなく、譲渡する契約の相手方の同意が必要となる場合があるなど、合併や会社分割とは異なる手続上の負担もあります。

    そのため、事業譲渡による承継は、後継者がすでに別会社を経営している場合だけでなく、先代会社のすべての権利義務を包括的に承継することを避け、必要な建設事業を選択して後継会社へ移したい場合にも有効な方法となります。

    ただし、事業譲渡を実行した後に建設業許可の承継認可を受けることはできません。事業譲渡の日と認可手続きをあらかじめ調整し、建設業許可が途切れないように計画することが重要です。

    3-5 合併・分割によって事業を引き継ぐ場合

    複数の法人が関係する事業承継では、事業譲渡だけでなく、合併や会社分割によって建設事業を後継会社へ引き継ぐ方法もあります。

    例えば、父親が経営するA社を息子が経営するB社へ吸収合併する方法や、A社の建設事業を会社分割によってB社へ承継させる方法などが考えられます。

    建設業法では、合併や会社分割についても事前に認可を受けることにより、建設業者としての地位を承継する制度が設けられています。そのため、適切に手続きを行えば、合併や会社分割によって法人が変わる場合でも、建設業許可を途切れさせずに事業を継続することが可能です。

    事業譲渡との大きな違いは、合併や会社分割が権利義務を包括的に承継する制度であることです。

    事業譲渡では、原則として譲渡する資産や負債、契約などを個別に定めて移転するため、契約によっては取引先などの同意が必要となります。一方、合併や会社分割では、法律上、対象となる権利義務が包括的に承継されるため、多数の契約や資産などをまとめて後継会社へ移転しやすいというメリットがあります。

    特に、従業員、取引先との契約、工事に関する権利義務、事業用資産などを含め、建設事業をまとまった形で後継会社へ移したい場合には、合併や会社分割が選択肢となります。

    一方で、包括承継には注意点もあります。

    合併の場合には、消滅会社の権利義務を原則として承継するため、後から判明した簿外債務や偶発債務などについても承継会社が負担する可能性があります。この点は、承継する資産や負債を選択しやすい事業譲渡との大きな違いです。

    会社分割の場合には、分割契約や分割計画によって承継する権利義務の範囲を定めることができるため、合併とは性質が異なります。そのため、「事業譲渡・合併・会社分割」のどの方法を選択するかについては、建設業許可だけでなく、承継する資産や負債、契約関係、税務なども含めて検討する必要があります。

    また、合併や会社分割による建設業許可の承継についても、承継後の法人が建設業許可の要件を満たしていることが必要です。経営業務の管理責任者等や営業所技術者等を誰にするのかについて、組織再編後の体制を事前に確認しておかなければなりません。

    事業承継では、会社そのものを一体として引き継ぐのであれば合併、特定の事業を切り出して引き継ぐのであれば会社分割、承継する資産や負債をより個別に選択したいのであれば事業譲渡というように、それぞれの特徴を踏まえて方法を検討することが重要です。

    第4章 建設業許可の承継制度とは?

    4-1 建設業許可には事業承継のための認可制度がある

    建設業許可は、許可を受けた法人や個人事業主に対して与えられるものであり、売買や相続などによって自由に他人へ譲渡できるものではありません。

    一方で、事業承継のたびに新たな建設業許可を取得しなければならないとすると、従前の事業者が廃業してから新しい事業者が許可を取得するまでの間、建設業を営むことができない期間が生じる可能性があります。

    そこで、現在の建設業法では、事業譲渡、合併、会社分割及び相続について、一定の要件を満たした場合に建設業者としての地位を承継できる制度が設けられています。

    事業譲渡、合併又は会社分割の場合には、効力が発生する前に認可を受けることで、譲受人や合併・分割後の法人が建設業者としての地位を承継します。

    また、個人事業主が死亡した場合についても、相続人が一定の期間内に認可を申請することで、被相続人の建設業者としての地位を承継できる制度があります。

    これらの制度を利用する大きなメリットは、新たに許可を取り直す場合と異なり、建設業者としての地位を承継できることです。

    例えば、事業譲渡等について認可を受けて承継した場合には、従前の建設業者が受けていた建設業許可について、許可を受けた地位が承継されます。

    ただし、「会社や事業を引き継げば建設業許可も自動的についてくる」という制度ではありません。事業譲渡、合併、会社分割については事前に認可を受ける必要があり、承継する側についても建設業許可の要件を満たしている必要があります。

    また、承継する側がすでに建設業許可を受けている場合には、双方の許可の内容によって承継の可否や手続きが問題となることがあります。そのため、許可業種だけでなく、一般建設業・特定建設業の区分などについても事前に確認しておく必要があります。

    建設業許可の承継制度を利用する場合には、事業承継の方法を決めた後で許可について考えるのではなく、事業譲渡や組織再編などを実行する前の段階から、建設業許可をどのように引き継ぐのかを併せて検討することが重要です。

    4-2 事業譲渡による建設業許可の承継

    建設業法第17条の2では、建設業者が建設業の全部を譲渡する場合、あらかじめ認可を受けることによって、譲受人が建設業者としての地位を承継できる制度が設けられています。

    この制度は法人から法人への事業譲渡だけでなく、個人事業主から後継者である個人への承継や、個人事業主の法人成りなどにも利用することができます。

    認可を受けた場合には、事業譲渡の日に、譲受人が譲渡人の建設業者としての地位を承継します。そのため、従来のように譲渡人が廃業し、譲受人が新規許可を取得する方法と異なり、許可の空白期間を生じさせることなく建設業を継続できることが大きなメリットです。

    ただし、承継の対象となるのは「建設業の全部」です。

    例えば、複数の業種について建設業許可を受けている会社が、そのうち一部の許可業種だけを別会社へ譲渡し、その許可だけを承継させるといったことはできません。建設業許可だけを自由に切り分けて売買できる制度ではない点には注意が必要です。

    また、譲受人についても、承継後に建設業許可の要件を満たしていなければなりません。経営業務の管理責任者等、営業所技術者等、財産的基礎などについて、承継後の体制を基準として審査されます。

    特に注意が必要なのが、譲受人がすでに建設業許可を受けている場合です。

    例えば、譲渡人が一般建設業の許可を受け、譲受人が同じ業種について特定建設業の許可を受けているなど、双方の許可内容が異なる場合があります。承継制度には、同一の業種について一般建設業と特定建設業の許可を同時に受けることができないなどの制約があるため、事前に双方の許可業種と許可区分を確認しておく必要があります。

    承継認可は「譲渡日」から逆算して進める

    事業譲渡による承継で特に重要なのが、申請と事業譲渡の順番です。

    承継認可は、事業を譲渡した後に申請するものではありません。建設業法上、事業譲渡について「あらかじめ」認可を受ける必要があるため、予定している譲渡日より前に申請し、行政庁による審査を受けておかなければなりません。

    例えば、4月1日を事業譲渡日とするのであれば、4月1日になってから承継認可を申請するのでは間に合いません。事前に認可申請を行い、行政庁による審査を受け、譲渡日までに認可の内諾を得ておく必要があります。

    そのうえで、予定どおり4月1日に事業譲渡を行い、同日付で認可を受けることで、譲受人が建設業者としての地位を承継することになります。

    したがって、実際の手続きは、おおむね次のような流れで進めます。

    ① 事業承継の方法と譲渡予定日を決める
    ② 譲渡人・譲受人双方の建設業許可の内容を確認する
    ③ 承継後の経営業務の管理責任者等、営業所技術者等などの許可要件を確認する
    ④ 事業譲渡契約など必要書類を準備する
    ⑤ 譲渡日前に許可行政庁へ承継認可を申請する
    ⑥ 行政庁による審査を受け、認可の内諾を得る
    ⑦ 予定した譲渡日に事業を譲渡する
    ⑧ 譲渡日付で認可され、譲受人が建設業者としての地位を承継する

    申請から内諾までには一定の審査期間が必要です。また、申請の受付時期や必要となる審査期間については許可行政庁によって取扱いが異なるため、譲渡日を決める段階で管轄行政庁へ確認し、余裕を持って申請することが重要です。

    法人成りの場合は法人設立の時期にも注意

    個人事業主の法人成りについても、建設業法第17条の2の事業譲渡による承継の仕組みを利用します。

    そのため、兵庫県の場合には、原則としてまず承継先となる法人を設立し、その後、個人事業主と設立した法人との間で事業譲渡契約を締結したうえで、承継認可を申請する流れとなります。

    例えば、父親が個人事業主として建設業を営んでおり、息子を代表取締役とする法人へ承継する場合には、先に息子を代表取締役とする法人を設立し、父親とその法人との間で事業譲渡契約を締結します。そのうえで、予定する事業譲渡日に向けて承継認可の手続きを進めることになります。

    ただし、法人成りによる承継認可の手続きについては、許可行政庁によって事前相談の方法や申請までの手順が異なる場合があります。行政庁によっては、法人を設立する前の段階で事前相談を行うことを求めている場合もあるため注意が必要です。

    そのため、「先に法人を設立してから建設業許可について相談すればよい」と一律に考えるのではなく、法人設立前の段階で管轄する許可行政庁の取扱いを確認しておくことをお勧めします。

    事業譲渡による承継では、「いつ申請するか」以上に「いつ事業を譲渡するのか」が重要です。先に譲渡日を決め、その日までに認可に必要な審査を終えられるよう余裕を持って準備を進めることが、建設業許可を途切れさせないためのポイントです。

    4-3 合併・会社分割による建設業許可の承継

    建設業法第17条の2では、事業譲渡だけでなく、法人の合併や会社分割についても、認可を受けることで建設業者としての地位を承継することができます。

    例えば、父親が経営するA社を息子が経営するB社へ吸収合併する場合、A社は合併によって消滅します。この場合でも、建設業許可の承継認可を受けることで、A社の建設業者としての地位を合併後に存続するB社へ承継することができます。

    会社分割についても、A社の建設事業を会社分割によってB社へ承継させる場合には、建設業許可の承継認可を利用することができます。

    事業譲渡との大きな違いは、合併や会社分割が会社法上の組織再編行為であることです。

    合併では、消滅会社の権利義務が存続会社又は新設会社へ包括的に承継されます。また、会社分割では、分割契約や分割計画で定めた権利義務が承継会社又は新設会社へ包括的に承継されます。

    そのため、多数の契約や資産、負債などを含めて事業を移転する場合には、個々の資産や契約などを移転させる事業譲渡とは異なるメリットがあります。

    一方、特に合併では、消滅会社の債務についても包括的に承継することになるため、簿外債務や偶発債務などを含め、承継する会社の状況を十分に確認しておく必要があります。

    また、合併や会社分割による承継では、会社法上の効力発生日と建設業許可の承継を連動させる必要があります。

    例えば、4月1日を吸収合併の効力発生日とするのであれば、その日から存続会社が建設業者として事業を継続できるよう、事前に承継認可の申請・審査を進めておきます。

    合併や会社分割では、株主総会、債権者保護手続、登記など会社法上の手続きも必要となります。そのため、「合併・分割の効力発生日」と「建設業許可の承継日」を一体として考え、全体のスケジュールを組むことが重要です。

    なお、承継後の法人が建設業許可の要件を満たす必要があることや、双方が建設業許可を受けている場合に許可業種・一般建設業・特定建設業の区分を確認する必要があることなど、承継認可に共通する注意点については、事業譲渡の場合と同様です。

    4-4 個人事業主の相続による建設業許可の承継

    個人事業主として建設業許可を受けていた方が亡くなった場合には、相続人が建設業者としての地位を承継するための制度があります。

    事業譲渡、合併、会社分割では、事前に承継認可の手続きを進めますが、相続は被相続人の死亡によって発生するため、手続きの仕組みが異なります。

    建設業法第17条の3では、建設業者である個人事業主が死亡した場合、相続人がその建設業を引き続き営もうとするときは、死亡後30日以内に認可を申請することとされています。

    この期限には特に注意が必要です。通常の相続手続きでは、相続財産の調査や遺産分割について時間をかけて検討することもありますが、建設業許可の承継については30日という短い期間で対応しなければなりません。

    また、相続による承継では、申請から認可又は不認可の処分がされるまでの間についても、相続人は引き続き建設業を営むことができる仕組みとなっています。

    認可を受けた場合には、相続人は被相続人の死亡の日にさかのぼって建設業者としての地位を承継したものとみなされます。そのため、適切に承継手続きを行うことで、個人事業主の死亡によって建設業許可が直ちに途切れてしまうことを防ぐことができます。

    ただし、誰でも相続人であれば建設業許可を承継できるわけではありません。承継する相続人についても、建設業許可に必要な要件を満たす体制を整える必要があります。

    特に個人事業では、亡くなった本人が経営業務の管理責任者等や営業所技術者等の要件を担っているケースが少なくありません。その場合、相続人自身の経営経験や資格・実務経験、従業員の技術者要件などを確認し、相続後も許可要件を満たせるかを確認する必要があります。

    また、相続人が複数いる場合には、そのうち誰が建設業を承継するのかについても早急に決める必要があります。相続財産全体の遺産分割とは別に、建設業を誰が継続するのかという問題を早い段階で整理することが重要です。

    個人事業主の高齢化などにより将来の事業承継を予定しているのであれば、相続が発生してから対応を考えるのではなく、生前に後継者を決め、事業譲渡による承継を行うことも選択肢となります。

    特に、後継者の許可要件がまだ整っていない場合には、相続発生後の30日間で対応することは困難です。個人事業の承継では、万一の場合の相続による承継も想定しながら、できる限り生前から後継者と建設業許可の体制を整えておくことが重要です。

    4-5 承継制度を利用する場合は手続きの時期に注意

    建設業許可の承継制度を利用するうえで、特に注意したいのが手続きを行う時期です。

    事業譲渡、合併、会社分割と相続では、認可申請を行うタイミングが大きく異なります。

    事業譲渡、合併、会社分割の場合には、事業譲渡や組織再編の効力が発生する前から承継認可の手続きを進める必要があります。先に事業譲渡や合併等を実行してしまい、その後で承継認可を申請するという順番ではありません。

    一方、個人事業主の相続については、被相続人の死亡後30日以内に認可を申請します。

    つまり、承継方法によって手続きのタイミングは次のように異なります。

    ・事業譲渡 → 譲渡日前に申請・審査を進める

    ・合併   → 合併の効力発生日前に申請・審査を進める

    ・会社分割 → 分割の効力発生日前に申請・審査を進める

    ・相続   → 死亡後30日以内に認可を申請する

    特に事業譲渡や合併、会社分割では、建設業許可だけを見てスケジュールを決めることはできません。事業譲渡契約、株主総会、債権者保護手続、法人登記など、事業承継そのものに必要となる手続きと建設業許可の承継認可を並行して進める必要があります。

    また、申請直前になって承継後の経営業務の管理責任者等や営業所技術者等が要件を満たしていないことが判明すれば、予定していた承継日そのものを見直さなければならないこともあります。

    そのため、建設業許可の承継では、「事業承継を実行してから許可の手続きをする」のではなく、事業承継の方法と実行日を検討する段階から、許可要件と承継認可のスケジュールを確認しておくことが重要です。

    特に社長の高齢化による世代交代では、いつまでに引退しなければならないという明確な期限が決まっていないことも多いため、時間に余裕があるうちに準備を始めることができます。後継者の育成や許可要件の確認も含め、数年単位で事業承継を計画することが、建設業許可を途切れさせないための最も確実な方法です。

    第5章 社長引退前に進めておきたい建設業許可の準備

    5-1 後継者を早めに役員等にして経営経験を積ませる

    建設業の事業承継では、後継者を決めるだけでなく、将来その後継者が建設業許可の要件を満たせるように準備しておくことが重要です。

    特に注意したいのが、経営業務の管理責任者等の要件です。

    例えば、父親が代表取締役兼経営業務の管理責任者等となっている会社で、将来息子へ事業を承継するのであれば、息子を早い段階から取締役に就任させ、建設業に関する経営経験を積ませておくことが考えられます。

    経営業務の管理責任者等の代表的な要件の一つとして、建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有することが挙げられます。

    そのため、例えば「65歳になったら息子へ会社を譲る」と考えていても、その時点になって初めて息子を役員にしたのでは、父親が完全に引退したい時期までに必要な経営経験を満たせない可能性があります。

    反対に、事業承継を予定している数年前から息子を取締役として経営に参加させておけば、父親が会社にいる間に必要な経験を積ませることができます。

    また、単に登記上取締役に就任させておけばよいというものではありません。将来その期間を経営業務の管理責任者等の経験として使用するのであれば、実際に建設業の経営業務に携わっていたことが重要です。

    さらに、将来その経験を建設業許可の申請や変更手続きで使用する際には、その経験を証明できなければなりません。役員登記だけでなく、その会社が当該期間に建設業を営んでいたことなどを確認できる資料についても保存しておく必要があります。

    親から子への事業承継は、株式や代表取締役の地位であれば比較的短期間で移すことができますが、建設業許可に必要となる「経験」は短期間で作ることができません。

    社長が将来の引退時期を考え始めた段階で、後継者をいつ役員にするのか、いつまでに必要な経営経験を満たせるのかを逆算しておくことが、建設業許可を途切れさせずに世代交代するための重要な準備となります。

    5-2 将来必要となる資格・実務経験を計画的に準備する

    事業承継に向けた準備では、経営経験だけでなく、建設業許可を維持するための技術者についても早い段階から育成しておくことが重要です。

    特に、先代社長自身が営業所技術者等となっている会社では、社長の引退と同時に技術面の許可要件を満たせなくなる可能性があります。

    後継者や従業員を将来の営業所技術者等とするのであれば、現在取得している建設業許可の業種を確認し、それぞれの業種について誰が要件を満たせるのかを確認しておきましょう。

    資格によって要件を満たすのであれば、必要となる国家資格などを早めに確認し、計画的に資格取得を進めることが考えられます。

    一方、実務経験によって要件を満たす場合には、さらに長期的な準備が必要です。原則10年以上の実務経験が必要となるケースもあるため、社長が引退する直前になってから経験を積ませようとしても間に合いません。

    また、実務経験は単に建設会社に勤務していた期間で判断されるものではありません。将来営業所技術者等となる業種に対応した建設工事について、必要な実務経験を積んでいることが必要です。

    そのため、複数の許可業種を持つ会社では、将来どの従業員にどの業種を担当させるのかまで考えて、資格取得や実務経験の積み方を計画しておくことが重要です。

    さらに、営業所技術者等を確保することだけを考えればよいわけではありません。営業所技術者等は原則として工事現場の主任技術者や監理技術者を兼ねることができないため、実際に工事を施工するための現場技術者についても確保しておく必要があります。

    一人の資格者や経験者に依存した体制では、その者の退職や長期離脱によって、許可の維持だけでなく工事の受注や施工にも影響が生じる可能性があります。

    事業承継は、社長だけを次の世代へ交代させるものではありません。後継者への世代交代とあわせて、資格取得や実務経験の蓄積を計画的に進め、複数の技術者を育成しておくことが、建設会社を長期的に継続していくうえで重要です。

    5-3 経営経験や実務経験を証明できる資料を残しておく

    後継者に必要な経営経験や実務経験を積ませる際には、経験年数だけでなく、将来その経験を証明できる資料を残しておくことも重要です。

    建設業許可では、「実際に長年仕事をしていた」という事実だけで経営業務の管理責任者等や営業所技術者等の要件が認められるわけではありません。許可申請や変更手続きの際に、必要な経験を客観的な資料によって証明する必要があります。

    例えば、経営業務の管理責任者等の経験を証明する場合には、役員としての経験期間を確認するための商業登記簿などに加えて、その期間に会社が建設業を営んでいたことを確認できる資料が必要となります。

    営業所技術者等の実務経験についても同様です。どの期間に、どの建設業の業種について実務経験を積んでいたのかを証明する必要があるため、工事請負契約書、注文書、請求書など、実際に行った工事の内容や期間を確認できる資料を残しておくことが重要です。

    特に注意したいのが、将来必要になるとは考えず、古い契約書や注文書などを処分してしまうケースです。

    例えば、息子が10年以上前から父親の会社で工事に携わっていたとしても、その当時の工事内容を確認できる資料が残っていなければ、必要な実務経験を十分に証明できないことがあります。

    また、建設業許可を受けている会社であれば、毎年提出している決算変更届などが経験を確認する資料として利用できる場合があります。そのため、過去の建設業許可申請書や変更届、決算変更届などについても適切に保存しておくことをお勧めします。

    経験を証明するために必要となる資料や確認方法は、経験の内容や許可行政庁によって異なることがあります。後継者の育成を始める段階で、「何年経験させればよいか」だけでなく、「将来その経験を何によって証明するのか」まで確認しておくことが重要です。

    建設業許可の事業承継では、後継者が十分な経験を積んでいたにもかかわらず、証明資料がないために許可要件として使用できないという事態は避けたいところです。将来の世代交代を見据えて、経営経験や実務経験を積ませることと、その証拠となる資料を保存することをセットで考えておきましょう。

    5-4 決算変更届や変更届など過去の手続きを確認する

    事業承継を予定している場合には、後継者の許可要件だけでなく、現在の建設業許可について必要な届出が適切に行われているかも確認しておきましょう。

    建設業許可を受けた後は、毎事業年度終了後の決算変更届をはじめ、役員、商号、営業所、経営業務の管理責任者等、営業所技術者等などに変更があった場合には、それぞれ必要な変更届を提出しなければなりません。

    ところが、長年建設業許可を維持している会社では、過去の変更が正しく届け出られていなかったり、実際の会社の状況と建設業許可上の登録内容が一致していなかったりすることがあります。

    例えば、役員がすでに退任しているのに変更届を提出していない、営業所の所在地が変わっている、経営業務の管理責任者等や営業所技術者等の変更手続きが行われていない、といったケースです。

    また、決算変更届が数年分提出されていない場合には、建設業許可の更新や承継手続きを進める前に、未提出となっている届出への対応が必要となることがあります。

    事業承継の直前になってこれらの問題が判明すると、過去の資料を探したり、届出内容を整理したりするために時間がかかり、予定していた承継スケジュールに影響する可能性があります。

    特に、先代社長が長年にわたって許可手続きを管理しており、後継者が許可の内容をほとんど把握していない会社では注意が必要です。

    事業承継を検討し始めた段階で、現在の許可業種、許可期限、経営業務の管理責任者等、営業所技術者等、営業所の状況、過去の決算変更届や各種変更届の提出状況などを一度整理しておくことをお勧めします。

    建設業許可を次の世代へスムーズに引き継ぐためには、後継者の準備だけでなく、現在の許可の状態を適正にしておくことも重要な事業承継対策です。

    5-5 社長の退任日から逆算して承継スケジュールを組む

    建設業許可を維持したまま事業承継を進めるためには、「いつか息子に会社を任せる」というだけではなく、社長がいつ退任するのかをある程度具体的に決め、そこから逆算して準備を進めることが重要です。

    例えば、5年後に先代社長が完全に引退するのであれば、その時点で誰が経営業務の管理責任者等となるのか、誰が営業所技術者等となるのかを確認します。

    後継者に経営経験が不足しているのであれば、必要な時期までに役員等として経験を積めるようにする必要があります。営業所技術者等となるための資格や実務経験が不足しているのであれば、資格取得や実務経験の蓄積についても同様に逆算して考えます。

    ここで重要なのは、「代表取締役を交代する日」と「先代社長が会社から完全に退く日」を必ずしも同じ日にする必要はないということです。

    例えば、まず息子を代表取締役にして経営の中心を移し、先代社長は常勤の取締役として一定期間会社に残る。その間に後継者や従業員の許可要件を整え、体制が完成した段階で先代社長が完全に退任するという段階的な承継も考えられます。

    一方、個人事業の場合には、法人のように先代を取締役として残すことはできません。そのため、親から子へ個人事業を承継するのであれば、承継する時点で後継者側に必要な許可体制が整っているかを、より早い段階から確認しておく必要があります。

    また、事業譲渡、法人成り、合併、会社分割などによって建設業許可の承継認可を利用する場合には、会社法上の手続きや事業譲渡契約などと建設業許可の手続きを並行して進める必要があります。承継日を先に決め、その日から逆算して認可申請や必要書類の準備を進めることになります。

    事業承継の準備期間は、会社によって大きく異なります。すでに後継者や他の役員・従業員が許可要件を満たしていれば比較的短期間で対応できることもありますが、これから経営経験や実務経験を積ませるのであれば、数年単位の準備が必要になることもあります。

    また、社長の高齢化による事業承継では、予定していた引退時期よりも早く、病気などによって社長が経営から離れざるを得なくなる可能性もあります。特定の一人だけが許可要件を担っている会社ほど、早めに後任者を育成しておくことが重要です。

    「何歳になったら事業承継を考えるか」ではなく、「何歳で引退したいのか、その時点で建設業許可を維持できる体制になっているか」から逆算することが、円滑な世代交代につながります。

    第6章 建設業許可を途切れさせずに事業承継するために

    6-1 「社長を交代するだけ」と考えないことが重要

    親から子への事業承継というと、「父親が代表取締役を退任して、息子が新しい代表取締役になれば完了」と考えてしまいがちです。

    しかし、建設会社の事業承継では、会社法上の代表者交代だけでなく、建設業許可を維持できる体制になっているかを確認する必要があります。

    特に中小規模の建設会社では、先代社長が代表取締役であるだけでなく、経営業務の管理責任者等や営業所技術者等を兼ねていることも少なくありません。

    このような会社で、代表取締役の交代と同時に先代社長が取締役からも退任してしまうと、新社長が就任して会社自体は存続していても、建設業許可の要件を満たせなくなる可能性があります。

    また、建設業許可を維持できたとしても、それだけで十分とは限りません。

    先代社長が資格者として現場でも中心的な役割を担っていたのであれば、社長交代後に主任技術者や監理技術者として配置できる人材が不足し、これまでと同じように工事を受注できなくなることも考えられます。

    そのため、事業承継を検討するときには、「次の社長を誰にするのか」だけではなく、

    ・経営業務の管理責任者等を誰にするのか

    ・営業所技術者等を誰にするのか

    ・現場に配置する技術者を確保できているか

    ・現在の許可業種をすべて維持できるか

    ・先代社長が完全に退任しても事業を継続できるか

    といった点まで確認しておく必要があります。

    さらに、個人事業の承継や別法人への事業譲渡、法人成り、合併、会社分割などでは、単なる代表者変更ではなく、建設業許可の承継認可など別の手続きが必要となる場合があります。

    建設会社の世代交代では、「社長の交代」と「建設業許可上の体制の承継」を分けて考えることが重要です。

    新しい社長を決めることをゴールとするのではなく、先代社長が会社から完全に離れた後も、建設業許可を維持し、これまでどおり事業を継続できる体制を作ることを事業承継のゴールとして考えましょう。

    6-2 先代が退任する前に許可要件を確認する

    事業承継に伴って先代社長が退任する場合には、実際に退任する前に、現在の建設業許可が誰によって維持されているのかを確認しておくことが重要です。

    特に、先代社長が経営業務の管理責任者等や営業所技術者等となっている場合には、先代社長が退任した後も、それぞれの要件を満たす後任者がいるかを確認しなければなりません。

    ここで注意したいのは、先に代表取締役や取締役の退任手続きを済ませてから、建設業許可の後任者を探すという順番にしないことです。

    例えば、先代社長が経営業務の管理責任者等となっているにもかかわらず、後任者の要件を十分に確認しないまま取締役を退任してしまえば、その時点で許可要件を満たせなくなるおそれがあります。

    「息子も長年会社にいるから大丈夫だろう」「この従業員なら営業所技術者等になれるだろう」と考えていても、実際に確認すると必要な経営経験が不足していたり、希望する許可業種について資格や実務経験の要件を満たしていなかったりすることがあります。

    そのため、先代社長の退任日を決める前に、少なくとも次の点は確認しておきましょう。

    ・先代社長が担っている建設業許可上の役割

    ・経営業務の管理責任者等の後任者とその経験

    ・営業所技術者等の後任者とその資格・実務経験

    ・後任者の経験を証明するために必要な資料

    ・現在取得しているすべての許可業種を維持できるか

    ・先代社長の退任に伴って必要となる変更届

    特に経営経験や実務経験については、「要件を満たしていると思う」だけではなく、実際に必要となる証明資料まで確認しておくことが重要です。

    確認した結果、後任者がまだ要件を満たしていないのであれば、先代社長の完全な退任時期を遅らせることも選択肢となります。先に後継者を代表取締役として経営の中心を移し、先代社長は常勤の取締役として一定期間残るなど、建設業許可を維持できる形で段階的に引退する方法を検討します。

    事業承継では、先代社長の退任日を先に決めて許可を後から合わせるのではなく、建設業許可を維持できる体制が整っていることを確認したうえで、最終的な退任日を決めることが重要です。

    6-3 後継者が決まったら早めに許可体制を設計する

    後継者が決まったら、単に将来の社長として経営を学ばせるだけでなく、事業承継後の建設業許可をどのような体制で維持するのかについても早めに考えておきましょう。

    まず確認したいのが、現在の建設業許可がどのような人員によって維持されているかです。

    先代社長が経営業務の管理責任者等と営業所技術者等を兼ねているのであれば、将来的にその両方を後継者へ引き継ぐのか、それとも複数の役員や従業員で役割を分担するのかを検討します。

    必ずしも、後継者一人にすべての許可要件を集める必要はありません。

    例えば、息子を代表取締役とし、経営業務の管理責任者等については経験を有する別の常勤役員、営業所技術者等については資格を持つ従業員を配置するといった体制も考えられます。

    むしろ、先代社長一人が複数の許可要件や技術上の役割を担ってきた会社では、事業承継を機に役割を複数人へ分散させることも検討したいところです。

    一人の役員や技術者に依存していると、その者が突然退職したり、病気などで勤務できなくなったりした場合に、建設業許可の維持や工事の施工に影響する可能性があります。

    また、現在の許可を維持することだけでなく、今後どのような工事を受注していきたいのかという将来の事業計画も考慮する必要があります。

    例えば、今後新しい業種の許可を追加したい、特定建設業の許可を取得したい、受注規模を拡大したいと考えているのであれば、それに対応できる資格者や技術者の育成・採用も必要となります。

    事業承継は、現在の建設業許可をそのまま次の世代へ残すだけではなく、今後10年、20年と事業を継続できる体制へ見直す機会でもあります。

    後継者が決まった段階で、誰を経営業務の管理責任者等とするのか、誰を営業所技術者等とするのか、現場技術者をどのように確保するのかまで考え、先代社長が完全に引退しても安定して事業を続けられる許可体制を作っておくことが重要です。

    6-4 事業承継と建設業許可の手続きは並行して進める

    建設会社の事業承継では、会社の承継手続きを決めてから最後に建設業許可について考えるのではなく、両方を並行して進めることが重要です。

    特に、事業譲渡、法人成り、合併、会社分割などを利用する場合には、事業承継そのものの手続きと建設業許可の承継認可が密接に関係します。

    例えば、事業譲渡によって建設業許可を承継する場合には、事業譲渡の日より前から承継認可の申請・審査を進めておく必要があります。

    事業譲渡契約を締結して譲渡日まで決めた後になって建設業許可について確認した結果、承継後の許可要件が整っていなかったり、認可申請の準備期間が足りなかったりすれば、予定していた譲渡日を変更しなければならない可能性があります。

    法人成りについても同様です。建設業許可の承継認可を利用する場合には、法人設立、事業譲渡契約、承継認可、実際の事業譲渡を一連の手続きとして考える必要があります。また、許可行政庁によっては法人設立前の事前相談を求めている場合もあるため、法人設立の時期についても事前に確認しておく必要があります。

    合併や会社分割の場合には、さらに会社法上の手続きや登記なども関係します。建設業許可だけで日程を決めるのではなく、合併・分割の効力発生日と建設業許可の承継日が適切につながるように全体のスケジュールを組まなければなりません。

    また、事業承継では建設業許可以外にも、取引先との契約、従業員、金融機関との関係、税務など、さまざまな問題が関係します。

    そのため、事業承継の方法を検討する段階から、「この方法で建設業許可を維持できるのか」「承継認可が必要なのか」「いつまでに何をしなければならないのか」を確認し、他の承継手続きと同時に進めることが重要です。

    建設業許可は、事業承継が終わった後に行う付随的な手続きではありません。建設業者にとっては、承継後も事業を継続するための重要な前提となるものです。

    事業承継の方法と建設業許可の手続きを一体として計画し、承継日から逆算して準備を進めることが、許可を途切れさせずに次の世代へ事業を引き継ぐためのポイントです。

    6-5 事業承継を決めた段階で専門家へ相談する

    建設業許可を維持しながら事業承継を進めるためには、実際に社長が退任する直前ではなく、事業承継を考え始めた段階で建設業許可についても確認しておくことをお勧めします。

    建設業許可の事業承継では、単に必要な書類を提出すればよいというものではありません。

    現在の許可要件を誰が担っているのか、後継者や他の役員・従業員が将来その要件を満たせるのか、法人の代表者変更で対応できるのか、それとも事業譲渡や法人成りなどによる承継認可が必要なのかなど、会社の状況によって検討すべき内容が異なります。

    また、後継者の経営経験や実務経験が不足している場合には、数年かけて経験を積ませる必要があることもあります。必要な資格を取得させたり、将来の営業所技術者等を育成したりする場合についても、一定の準備期間が必要です。

    そのため、「来月社長を交代するので建設業許可の手続きをしてほしい」という段階になって初めて相談すると、希望する時期に先代社長が完全に引退できないことも考えられます。

    特に、事業譲渡、法人成り、合併、会社分割によって建設業許可を承継する場合には、承継日より前から認可手続きを進める必要があります。許可行政庁によって事前相談や申請時期などの取扱いが異なる場合もあるため、早めの確認が重要です。

    事業承継の初期段階で相談すれば、現在の許可体制を確認したうえで、

    ・誰を後継者とするのか

    ・誰に経営業務の管理責任者等を担わせるのか

    ・誰を営業所技術者等として育成するのか

    ・現在の許可業種をすべて維持できるのか

    ・どの承継方法を選択するのか

    ・いつ代表者を交代し、いつ先代が完全に引退するのか

    といった点を整理し、必要な準備期間から逆算して承継計画を立てることができます。

    建設業許可の事業承継では、手続きそのものよりも、承継後も許可要件を満たせる体制を事前に作っておくことが重要です。

    社長の引退や親から子への世代交代を考え始めたら、具体的な退任日や承継方法を確定する前に、建設業許可に詳しい行政書士などの専門家へ相談し、現在の許可体制と後継者の状況を確認しておくことをお勧めします。

    建設業許可手続きセンター (行政書士こうべ元町事務所)

    該当ガイドラインを熟知した行政書士が、全国の建設業を営む皆様のご相談を受け付けています。建設業許可の申請や業種追加など、円滑な業務を支えるための複雑な手続きをサポートする事務所を兵庫に構えています。

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