行政書士こうべ元町事務所

建設業と取適法の適用範囲まとめ

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取適法と建設業法

取適法と建設業法

2026/02/07

最近、取適法施行(令和8年1月1日)に伴い問い合わせが増えてきたので、少しブログにまとめてみたいと思います。

第1章 取適法とは何か

取適法は、中小の受託事業者が不利な取引条件を押し付けられないようにするための法律で、2026年1月1日に施行されます。正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」で、約50年ぶりに下請法が大きく見直され、名称も含めて新しい枠組みに生まれ変わりました。

この法律が必要とされた背景には、原材料費やエネルギー価格の高騰、サプライチェーンの複雑化、そして中小企業の交渉力の弱さがあります。買いたたきや支払遅延、価格転嫁の拒否といった問題が深刻化し、従来の下請法では十分に対応できない場面が増えていました。

取適法は、こうした状況を改善するために次のような役割を果たします。

  • 中小受託事業者が不利益を受けないようにする
  • 価格交渉を適正に行わせる
  • 手形払いを原則禁止し、資金繰りの悪化を防ぐ
  • サプライチェーン全体の取引環境を健全化する

特に、手形払いの原則禁止や価格協議の義務化は、従来の下請法にはなかった大きな変更点です。企業には、これまでの慣行を見直し、より透明で公正な取引を行う姿勢が求められます。

この章では取適法の基本的な位置づけと目的を整理しました。次の章では、具体的なポイントをさらに掘り下げていきます。

第2章 取適法の主なポイント

取適法の特徴は、従来の下請法では十分にカバーできなかった領域を補い、中小受託事業者の取引環境をより実態に即して保護する点にある。制度の枠組み自体は下請法を引き継ぎつつ、対象範囲や義務内容が大きく強化されています。


対象取引が5類型に拡大されます。

従来の「製造委託」「修理委託」「情報成果物作成委託」「役務提供委託」に加え、新たに「特定運送委託」が追加され、5類型となりました。
また、金型等の対象範囲も広がり、より多様な業種・業態が保護対象に含まれるようになりました。


手形払いの原則禁止になります

政府の「手形廃止」方針に合わせ、手形による支払いは原則禁止となります。
資金繰りの悪化を招きやすい長期手形の慣行を断ち切り、現金払い・短期決済を促す狙いがあります。


価格協議の義務化されます

原材料費やエネルギー価格が高騰した際、受注者が価格改定を求めたにもかかわらず、発注者が協議を拒否したり、結論を引き延ばす行為が禁止されます。
「協議に応じる姿勢」そのものが義務化された点が大きな特徴で、実質的な価格転嫁の促進が期待されています。


書類保存義務(2年間)が課されます

取引内容を確認できる書類を2年間保存することが義務付けられます。
後日の紛争防止や、公正取引委員会による調査の実効性を高めるための仕組みです。


違反時のリスクが高まります

違反が認められた場合、公正取引委員会から指導・勧告を受ける可能性があります。
法的制裁だけでなく、企業の信用低下や取引先からの評価悪化といったリスクも無視できません。


 

第3章 建設業は取適法の適用対象となるのか

建設業界で最も多く寄せられる疑問が「建設工事の請負にも取適法が適用されるのか」という点ですが、結論として、建設工事そのものは取適法の適用対象外となります。建設工事の請負や再委託は、従来どおり建設業法の規律に従うことになります。

ただし、建設業者が行うすべての取引が適用外になるわけではありません。建設工事以外の部分については、取適法の対象となるケースが明確に存在します。公正取引委員会のQ&Aでも、建設業者が関与する取引のうち、工事そのものを離れた委託行為は取適法の対象になると整理されています。


建設工事の請負は適用外です

建設工事の施工や再委託は、建設業法の枠組みで規律されるため、取適法の適用はありません。
工事の出来形支払いや請負代金の適正性などは、建設業法19条の3や24条の3などで保護されています。


取適法が適用されるケースがあります

建設業者であっても、工事以外の委託行為を行う場合は取適法の対象となります。

  • 建設資材を業として販売し、その製造を外部に委託する場合(製造委託)
  • 自社工事で使用する資材の製造を委託する場合(製造委託)
  • 建築物の設計、内装設計、工事図面の作成を外部に委託する場合(情報成果物作成委託)
  • 建売住宅の設計図等を外部に委託する場合(情報成果物作成委託)
  • 資材販売に伴う運送を外部に委託する場合(特定運送委託)

これらは「建設工事の請負」ではなく、製造・情報成果物・運送といった別の委託類型に該当するため、取適法の保護対象となります。


建設業者は完全に無関係ではありません

建設工事そのものは適用外であるものの、建設業者が日常的に行う周辺業務の中には取適法の対象となる取引が含まれています。
また、取適法の趣旨は「中小事業者の保護」と「公正な取引環境の確保」であり、建設業法も同じ理念を持っています。

そのため、建設業界も取適法の流れを無視することはできず、取引慣行の見直しが求められる場面が今後さらに増えていくと考えられます。


 

第4章 建設業に適用される建設業法の規定と取適法との関係

建設工事そのものは取適法の対象外ですが、だからといって建設業者が保護されないわけではありません。工事に関する取引は建設業法の中でしっかりとルールが整備されており、取適法と同じ趣旨で中小の下請を守る仕組みが用意されています。ここでは、取適法のポイントと対応する建設業法の規定を整理し、建設業者がどのような保護を受けられるのかを見ていきます。


不当に低い請負代金の禁止(建設業法19条の3)

極端に安い金額を押し付ける「買いたたき」は、建設業法でも明確に禁止されています。
価格協議に応じない、協議を引き延ばす、指値発注を繰り返すといった行為も、この規定に抵触する可能性があります。


下請代金の支払期限(建設業法24条の3)

元請は、発注者から出来高払いや完成後の代金を受け取った場合、その金額に応じた下請代金を「1か月以内、かつできる限り短い期間」で支払わなければなりません。
この規定により、支払遅延を防ぎ、下請の資金繰りを守る仕組みが整えられています。


手形に関するルール(建設業法24条の6)

特定建設業者は、金融機関で割引が難しい長期手形を下請に交付してはいけません。
120日以上(2024年11月以降は60日以上)の手形が典型例で、実質的に長期手形の使用を制限する内容になっています。

特定建設業者以外には直接の禁止規定はありませんが、24条の3の「支払を受けたものとみなされる」要件があるため、長期手形を使うと支払義務を果たしたことにならないケースが出てきます。結果として、建設業界全体で手形依存は徐々に難しくなっています。


不誠実な行為の禁止(建設業法28条)

振込手数料を勝手に差し引く、契約内容を曖昧にしたまま発注する、指値を押し付けるなどの行為は「不誠実な行為」として処分対象になる可能性があります。
取適法で問題視される行為の多くは、建設業法でも同じように問題となります。


建設業法と取適法の関係

建設工事に関する取引は建設業法が優先して適用されるため、取適法の直接適用はありません。
しかし、両方の法律が目指しているのは「中小事業者を守り、公正な取引を実現すること」という共通の目的です。
そのため、建設業界も取適法の流れを無視することはできず、支払条件や価格協議のあり方を見直す動きが今後さらに強まっていくと考えられます。


 

第5章 建設業でよく寄せられる質問とその考え方

建設業は取適法の直接の対象ではありませんが、「取適法で禁止されたと聞いたが、建設業ではどうなるのか」という相談は増えています。ここでは、現場で特に多い質問を取り上げ、建設業法ではどのように扱われるのかを、できるだけ平易な言葉で整理します。


価格協議に応じないのは違法になるのか

価格交渉を無視したり、結論を先延ばしにする行為は、建設業法19条の3にある「不当に低い請負代金の禁止」に触れる可能性があります。
協議に応じないまま一方的に金額を決めることは、取適法と同じく建設業法でも問題とされています。


指値発注はどう扱われるのか

「この金額でやってほしい」と一方的に押し付ける指値発注も、状況によっては不当に低い請負代金の押し付けとみなされます。
建設業法でも、協議の余地がない発注方法はトラブルの原因になりやすく、適切ではないとされています。


手形は本当に禁止なのか

取適法では手形払いが原則禁止になりますが、建設業法では少し事情が異なります。

  • 特定建設業者は、割引が困難な長期手形(120日以上、2024年11月以降は60日以上)を交付してはいけません
  • 特定建設業者以外には直接の禁止規定はありません
  • ただし、長期手形は「支払を受けた」とみなされない可能性があり、実務上は使いにくい状況です

さらに、紙の手形自体が2027年3月末で廃止予定のため、建設業界でも手形依存からの脱却が求められています。


振込手数料を差し引いて支払うのは違法か

振込手数料を一方的に差し引く行為は、建設業法28条の「不誠実な行為」に該当する可能性があります。
民法でも、弁済にかかる費用は原則として支払う側が負担するとされています。

契約書に「振込手数料は受取側負担」と明記していれば問題ありませんが、明記がなければ差し引くことは避けるべきです。


取適法の相談を公正取引委員会にしてもよいのか

建設工事の請負は取適法の対象外のため、公正取引委員会では対応できません。
ただし、建設業法には「中小企業庁長官による調査・立入検査」(42条の2)があり、中小の下請を守るための仕組みが用意されています。

建設業者は取適法の対象外であっても、救済手段がないわけではありません。


 

第6章 中小企業庁による救済措置と建設業者が取適法と無関係ではない理由

建設工事の請負は取適法の対象外ですが、「では建設業者はどこにも相談できないのか」というと、そうではありません。建設業法には、中小の下請を守るための仕組みがしっかりと用意されています。その中心となるのが、建設業法42条の2に定められた 中小企業庁長官による措置 です。


中小企業庁長官による調査・立入検査(建設業法42条の2)

建設業法42条の2では、次のような権限が認められています。

  • 中小企業庁長官は、中小の下請負人を守るために必要があると判断した場合、元請や下請に対して報告を求めることができる
  • 必要に応じて、職員が営業所などに立ち入り、帳簿や書類を確認することができる

これは、建設業界における「下請保護のための監督機能」として位置づけられており、公正取引委員会が取適法を運用するのと同じように、中小企業庁が建設業法の枠組みで下請を守る役割を担っています。


建設業は取適法の対象外でも“無関係”ではない理由

建設工事そのものは取適法の適用外ですが、次のような理由から、建設業界も取適法の流れを無視できません。

  • 取適法と建設業法は、どちらも「中小事業者の保護」という同じ目的を持っている
  • 手形廃止や価格転嫁の適正化など、国全体の政策として取引改善が求められている
  • 公正取引委員会の通知でも、建設業に対して「支払条件の改善」「現金払いの推奨」などが明確に示されている
  • サプライチェーン全体での取引適正化が進む中、建設業だけが従来の慣行を続けることは難しくなっている

つまり、法律の適用範囲は異なっていても、求められている方向性は同じです。


建設業者が意識しておきたいポイント

  • 価格協議には誠実に応じる
  • 手形依存からの脱却を進める(2027年3月で紙手形廃止)
  • 支払条件の改善(前払・期中払の活用)
  • 契約書で振込手数料の扱いを明確にする
  • 下請との取引記録を適切に残す
  • 不誠実な行為と受け取られる可能性のある慣行を見直す

これらは取適法の趣旨とも一致しており、建設業界でも今後ますます重要になります。


次の第7章では、こうした背景を踏まえ、建設業者が実務で押さえておきたいポイントをさらに整理していきます。

第7章 建設業者が実務で押さえておきたいポイント

取適法の直接の対象ではないとはいえ、建設業界も「取引の適正化」という大きな流れの中にあります。国の方針として、価格転嫁の適正化や手形廃止、支払条件の改善が進んでいるため、建設業者もこれまでの慣行を見直す必要が出てきています。ここでは、日々の取引で意識しておきたいポイントを整理します。


価格協議には誠実に対応する

原材料費や人件費が上がっている中、下請からの価格協議を無視したり、結論を先延ばしにすることは避けるべきです。
建設業法でも不当に低い請負代金の禁止が定められており、協議に応じない姿勢は問題視されます。


手形依存からの脱却を進める

紙の手形は2027年3月末で廃止される予定です。
建設業法では長期手形の交付が制限されており、実務でも手形払いは徐々に使いにくくなっています。
今のうちから、現金払いや短期決済への移行を進めておくことが望ましいです。


支払条件を見直す

公正取引委員会の通知でも、建設工事においては「前払比率・期中払比率をできる限り高めること」が求められています。
資金繰りの改善は下請の安定につながり、結果として工事全体の品質やスケジュールにも良い影響があります。


振込手数料の扱いを契約書で明確にする

振込手数料を一方的に差し引くことは、建設業法上「不誠実な行為」と判断される可能性があります。
トラブルを避けるためにも、契約書に「どちらが負担するか」を明記しておくことが重要です。


取引記録を残す習慣をつける

取適法では書類保存が義務化されましたが、建設業でも記録を残すことは非常に重要です。実際、建設業法で契約書の作成と書類の保存が義務付けられています。
価格協議の経緯、支払条件、契約内容などを残しておくことで、後日のトラブル防止につながります。


不誠実と受け取られる行為を避ける

指値発注、曖昧な口頭契約、支払遅延、手数料の一方的な控除などは、建設業法でも問題となり得ます。
「相手がどう受け取るか」を意識し、透明性のある取引を心がけることが大切です。


第8章 まとめ:建設業も「取引の適正化」という流れの中にある

取適法は中小受託事業者を守るために大きく制度が見直された法律ですが、建設工事そのものは適用外となっています。ただし、建設業者が行う資材製造の委託や設計委託、運送委託などは取適法の対象となる場合があり、完全に無関係というわけではありません。

一方で、建設工事に関する取引は建設業法によってしっかりと保護されており、価格協議、支払期限、手形の扱い、不誠実な行為の禁止など、取適法と同じ趣旨の規定が整備されています。さらに、中小企業庁による調査・立入検査の制度もあり、建設業者が相談できる仕組みも用意されています。

国全体として「価格転嫁の適正化」「手形廃止」「支払条件の改善」が進んでいる中、建設業界も従来の慣行を見直すことが求められています。下請との協議を丁寧に行うこと、支払条件を改善すること、契約内容を明確にすることなど、日々の取引の中でできる取り組みは多くあります。

建設業は取適法の対象外であっても、その趣旨に沿った取引を行うことが、結果として自社の信頼性向上やトラブル防止につながります。業界全体がより健全で透明な取引環境へと進んでいくためにも、今後の動向を踏まえながら、適正な取引の実践を続けていくことが大切です。

 

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