行政書士こうべ元町事務所

経営業務の管理責任者に関する考察(私見)

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経営業務の管理責任者に関する考察(私見)

経営業務の管理責任者に関する考察(私見)

2025/08/14

建設業の経営業務の管理責任者に関して考察してみました。頭の体操にご覧ください。

 

1. 「常勤」の対象と配置場所の使い分け

経営業務の管理責任者(以下「経管」)について、逐条解説(第10版P82)では「役員のうち常勤であるもの」とは、いわゆる常勤役員をいい、原則として本社・本店等において休日その他勤務を要しない日を除き、一定の計画のもとに、毎日所定の時間中、その職務に従事している者をいう、と明確に定義している。
ここで注目すべきは、経管に求められる「常勤」が、本社・本店という企業の経営中枢拠点を前提として説明されている点である。一方、同じく許可要件である「専任の技術者」については、逐条解説上「専任のものとは、その営業所に常勤して専ら職務に従事することを要する者」とされ、「営業所」という用語が用いられている。つまり、経管と専任技術者では、常勤先を規定する用語が意図的に使い分けられていると解される。
さらに、逐条解説P98で経管と専任技術者を同一人としてよいとする説明においても、「経営経験を有する者とその者が常勤する営業所(通常の場合は本社・本店等であろう)」と記載されており、やはり本社本店が常勤先であることが標準的な想定とされている。このことから、本社本店以外の営業所を主たる営業所とし、その営業所に常勤する役員を経管とすることは、あくまで例外的な取扱いであると位置付けられるべきである。

 


 

2. 常勤役員限定の趣旨

経管を常勤役員に限定する趣旨は、許可申請者が法人である場合、経営業務を日常的に執行できる体制を担保するためである。逐条解説でも「日常の経営業務を具体的に執行している役員が、この要件を満たすものでなければ、建設業の適正な経営が行われることを期待しえない」と明示されており、単に形式的に役員であるだけの者や、取締役会への出席に限られる非常勤役員は対象外とされている。
経管の役割は、経営判断と業務執行の双方にまたがるものであり、その職務には以下のような権限と責務が含まれる。

  • 工事の内容に応じた資金調達計画の立案・実行

  • 資材の調達と購買管理

  • 技術者や労働者の採用・配置

  • 下請負人の選定と下請契約の締結

  • 工事完成までの工程・品質・安全管理
    これらは経営の根幹に関わる事項であり、5年以上の経営業務経験を有する人物が最低1名は必要とされるのは、建設業法の公共性・安全性を担保するための制度設計である。

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3. 令3条の使用人との役割分担

建設業法施行規則第3条に基づく「令3条の使用人」は、逐条解説(P74)において「建設工事の請負契約の締結および履行、及びその履行に当たって一定の権限を有すると判断される者、すなわち支配人及び支店または営業所(本店を除く)の代表者である者」と定義される。つまり令3条の使用人は現場営業所で契約業務を遂行する代表者であり、資金調達や全社的資材購入といった経営中枢業務は担当しないのが原則である。
したがって、営業所に経管が不在の場合、その営業所の契約締結や履行は令3条の使用人が行い、経営上の中枢判断は本社本店の経管が担うという役割分担になる。この構造は、経管が全社的な資源配分や経営判断を集中管理することで、企業全体の施工体制と経営の一体性を確保する制度趣旨に合致している。

 


 

4. 本店が建設業法上の営業所かどうか

逐条解説第3条では、「本店又は支店は、常時建設工事の請負契約を締結する事務所でない場合であっても、他の営業所に対し請負契約に関する指導監督を行う等、建設業に係る営業に実質的に関与する事務所であれば本条の営業所に該当する」としている。しかし、「営業所」の定義の根幹は「常時請負契約を締結する事務所」にあるため、資金調達や資材購入といった経営行為は狭義の契約締結には含まれないと解される。
よって、本店が契約業務を行わない場合、形式的には建設業法上の営業所に該当しない可能性がある。ただし、経管の常勤先が主たる営業所であるという運用前提との整合性をどう保つかは制度上の課題であり、現行法の下では例外的な解釈や補足的な社内体制整備が必要となる。

 


 

現在以下の見解を認める許可行政庁はありませんのでご注意を!

 

5. 実務上の提案

近年、建設業専業でない企業(例:製造業の一部門として建設工事を請け負う企業)が増加している。この場合、本店が資金調達や全社的資材購入を統括し、現場ごとの営業所には令3条の使用人を配置する体制が現実的である。
しかし、現行制度では「経管の常勤先=主たる営業所」という整理が申請上前提とされるため、本店が建設業法上の営業所として登録されていない場合、形式的要件を満たさない恐れがある。
この矛盾を解消するためには、次のような制度改善が考えられる。

  • 主たる営業所(本社本店)について、業種を持たない形での営業所登録を認める

  • 経管の常勤先を「全社的経営判断を行う拠点」であれば営業所に限定しない運用指針を示す

  • 令3条の使用人と経管の役割分担を明確化した指導通達を発出する

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