経営事項審査について
2025/05/16
そもそも経営事項審査とは何か?
経営事項審査(経審)とは、公共工事を直接請け負うために必要な審査制度です。国や地方公共団体が発注する工事に参加する建設業者は、この審査を受けることが義務付けられています。
経営事項審査の目的
公共工事の発注者は、競争入札に参加する建設業者の資格を審査する必要があります。その際、企業の経営状況や技術力、社会性などを数値化し、客観的に評価するために経営事項審査が行われます。
審査の主な項目
経営事項審査では、以下のような項目が評価されます:
- 経営規模(X評点):企業の売上や資本の規模
- 技術力(Z評点):保有する技術者の資格や元請工事の実績
- 社会性(W評点):社会保険の加入状況や法令遵守の度合い
- 経営状況(Y評点):財務状況や利益率など
これらの評価を総合して**総合評定値(P点)**が算出され、公共工事の入札資格に影響を与えます。
有効期限と申請の流れ
経営事項審査の結果は審査基準日(決算日)から1年7ヶ月間有効です。毎年公共工事を請け負う場合は、期限が切れないように定期的に審査を受ける必要があります。
経営事項審査が建設業者の経営にどんな影響を与えるのか?
経営事項審査の点数は、公共工事の入札資格や受注可能な工事の規模に直接影響します。具体的には以下のような影響があります:
1. 入札参加資格の決定
- 経営事項審査の点数(総合評定値 P点)が高いほど、より大規模な公共工事の入札に参加できるようになります。
- 自治体や発注機関によっては、一定の点数以上でないと入札資格を得られない場合があります。
2. 企業の格付け
- 経営事項審査の点数は、自治体や発注者による業者の格付けに影響します。
- 点数が高い企業ほど、信頼性や技術力が高いと評価され、受注のチャンスが増える。
3. 受注可能な工事の種類
- 点数が高い企業は、より高額な工事や専門性の高い工事を受注できる可能性が高まります。
- 逆に点数が低いと、小規模な工事しか受注できない場合があります。
4. 財務状況の影響
- 営業利益や経常利益が増減すると、経営事項審査の点数も変動します。
- 例えば、営業利益が増えると「X2評点」が上がり、経常利益が増えると「Y評点」がアップするため、総合評定値が向上します。
5. 赤字決算の影響
- 赤字決算の場合、経営事項審査の点数が下がる可能性が高いです。
- 特に「自己資本額」「財務健全性」「収益性・効率性」などの評価項目に影響を与え、入札資格に不利になることがあります。
経営事項審査の点数を上げることで、より有利な条件で公共工事の受注が可能になります。
経営事項審査の点数がどのように影響するか、具体例を挙げて説明します。
具体例①:完成工事高の影響
ケースA: 建設会社Aは、年間平均完成工事高が1億円
ケースB: 建設会社Bは、年間平均完成工事高が5,000万円
→ 結果:
建設会社Aの完成工事高評点(X1)は711点、建設会社Bの完成工事高評点は645点。
完成工事高が高いほど、X1評点が上がり、総合評定値(P点)が向上します。
具体例②:技術職員の影響
ケースA: 建設会社Aは、1級施工管理技士を5名保有
ケースB: 建設会社Bは、1級施工管理技士を2名保有
→ 結果:
技術職員数が多いほど、技術力評点(Z評点)が上がり、総合評定値が向上します。
例えば、技術職員数が増えることで、Z評点が650点から750点に上昇し、入札資格が格上げされる可能性があります。
具体例③:財務状況の影響
ケースA: 建設会社Aは、自己資本比率が50%
ケースB: 建設会社Bは、自己資本比率が20%
→ 結果:
自己資本比率が高いほど、財務健全性(Y評点)が向上し、総合評定値が上がります。
例えば、自己資本比率が高い企業は、入札資格のランクが上がる可能性があります。
まとめ
経営事項審査の点数は、完成工事高・技術職員数・財務状況などの要素によって決まります。
これらの要素を改善することで、公共工事の入札資格を向上させることが可能です。
経営事項審査の点数を上げるには?
経営事項審査の点数を上げるには、いくつかの方法があります。以下に主なポイントをまとめます:
- 完成工事高の調整:
- 審査対象年度の完成工事高を増やすために、工事進行基準を採用することが有効です。
- 完成工事高を関連する一式工事や専門工事に振り替えることで、点数アップを狙えます.
- 技術職員の登録:
- 技術職員の資格を確認し、漏れなく登録することで加点対象を増やします。
- 資格取得を促進し、技術力の評価を向上させることが重要です.
- 社会保険制度の活用:
- 社会保険(雇用保険、健康保険、厚生年金保険)への加入や、建設業退職金共済制度の利用が加点につながります.
- 経営状況の改善:
- 自己資本比率を高めたり、借入金を減らすことで、財務健全性の評価を向上させることができます.
これらの方法を実行する際には、会社の状況に応じた最適な戦略を検討することが大切です。
どの方法が最も効果的か?
- 短期間で点数を上げたい場合 → 完成工事高の調整
完成工事高の調整は、経営事項審査のX1評点を向上させるための重要な戦略です。短期間で点数を上げるためには、以下の方法が有効です。
1. 工事進行基準の採用
- 期末未成工事を「工事完成基準」ではなく「工事進行基準」で計上することで、完成工事高を増加させる。
- これにより、未完成の工事でも進行度合いに応じて完成工事高として認識され、X1評点が向上する。
2. 業種間の完成工事高の積み上げ
- 経営事項審査を受ける業種に関連する他の業種の完成工事高を合算することで、X1評点をアップさせる。
- 例えば、土木工事業と舗装工事業の許可を持つ企業が、土木工事業のみ審査を受ける場合、舗装工事業の完成工事高を土木工事業に加算できる。
3. 兼業売上高の見直し
- 建設資材や設備の販売を兼業としている場合、設置工事を伴う売上を完成工事高として計上することで、X1評点を向上させる。
- 例えば、コンクリート販売業者が納入時に打設工事を行う場合、コンクリート代金も完成工事高に含めることが可能。
4. 高額工事の受注
- 高額な工事を受注し、完成工事高を増やすことで、X1評点を大幅に向上させる。
- 特に元請工事の割合を増やすことで、評価が高くなる。
これらの方法を組み合わせることで、短期間で経営事項審査の点数を向上させることが可能です。
- 長期的な企業の安定を目指す場合 → 財務状況の改善
財務状況の改善は、経営事項審査のY評点を向上させるために重要な要素です。企業の財務健全性を高めることで、公共工事の入札資格を強化し、長期的な安定を確保できます。
財務状況改善の具体的な方法
- 自己資本比率の向上
- 自己資本を増やし、負債を減らすことで財務健全性を強化。
- 利益剰余金を積み上げ、内部留保を増やす。
- 負債回転期間の短縮
- 借入金の返済を計画的に進め、負債総額を減らす。
- 期末の工事未払金を適正に管理し、負債額を抑える。
- 売上高経常利益率の向上
- コスト削減と効率的な経営を行い、利益率を改善。
- 高利益率の工事を増やし、収益性を高める。
- 営業キャッシュフローの改善
- 資金繰りを適切に管理し、安定したキャッシュフローを確保。
- 収益性の高い事業への投資を強化。
これらの施策を実行することで、経営事項審査のY評点を向上させ、企業の財務基盤を強化できます。
- 技術力を強化し、専門性の高い工事を受注したい場合 → 技術職員の強化
技術職員の強化は、経営事項審査のZ評点を向上させるために重要な戦略です。技術力を高めることで、公共工事の入札資格を強化し、より専門性の高い工事を受注できる可能性が高まります。
技術職員強化の具体的な方法
- 国家資格者の計画的な確保
- 1級施工管理技士や技術士などの資格取得を促進し、技術職員数を増やす。
- 社内で資格取得支援制度を導入し、社員のスキルアップをサポート。
- 若手技術者の育成
- 実務経験を積ませることで、将来的に技術職員として評価される人材を育成。
- 500万円以上の元請工事の主任技術者を担当させ、経験を積ませる。
- 外部技術者の採用
- 必要な資格を持つ技術者を採用し、技術職員数を増やす。
- 定年退職したベテラン技術者を嘱託契約で雇用し、技術力を補強。
- 技術職員の配置と職務実績の管理
- 過去の工事で主任技術者・監理技術者として配置された実績を整理し、適切に評価されるようにする。
- 技術者の経歴管理を徹底し、審査時に適切な証明書類を提出できるよう準備。
現在、キャリアアップシステム上の経験の認証についてはキャリアアップシステムへ登録されている期間しか認められなくなっています。許可や経審の上での実務経験についてもそうなる可能性がないとは言えませんので、キャリアアップシステム未導入の会社でも若手育成の観点から導入を検討する必要があるかもしれません。
これらの施策を実行することで、技術力を強化し、経営事項審査の点数を向上させることが可能です。
- 比較的簡単に加点したい場合 → 社会性の向上
社会性の向上は、経営事項審査のW評点を向上させるための重要な戦略です。比較的簡単に加点できる項目が多いため、企業の信頼性を高めるために積極的に取り組む価値があります。
社会性向上の具体的な方法
- 労働環境の改善
- 雇用保険、健康保険、厚生年金保険への加入を徹底することで加点。
- 建設業退職金共済制度(建退共)への加入でさらに評価アップ。
- 法令遵守の強化
- 過去の行政処分履歴を確認し、コンプライアンスを徹底することで減点を防ぐ。
- 労働安全衛生法や建設業法の遵守を強化し、企業の信頼性を向上。
- 防災活動への貢献
- 地方自治体や国と防災協定を締結することで加点。
- 災害時の復旧支援活動に積極的に参加することで評価を高める。
- 建設機械の保有
- 災害対応に必要な建設機械(ショベル系掘削機、ブルドーザーなど)を保有することで加点。
- 特定自主検査を受けた機械を適切に管理することで評価アップ。
- ISO認証の取得
- ISO9001(品質管理)やISO14001(環境管理)を取得することで加点。
- エコアクション21の認証を取得することで環境配慮の評価を向上。
これらの施策を実行することで、比較的簡単に経営事項審査の点数を向上させることが可能です。
経営事項審査(経審)のまとめ
経営事項審査は、公共工事を請け負う建設業者に必須の審査制度で、企業の経営状況や技術力を数値化し、入札資格に影響を与えます。
1. 経営事項審査の目的
- 公共工事の発注者が、企業の財務状況や技術力を客観的に評価するための基準として活用。
- 適正な競争を確保し、優良企業に工事を発注するための仕組み。
2. 審査項目
経審では以下の項目を評価し、総合評定値(P点)を算出:
- 経営規模(X評点): 売上高・資本規模
- 技術力(Z評点): 技術者数・資格保有状況
- 社会性(W評点): 保険加入・法令遵守・ISO認証
- 財務状況(Y評点): 自己資本比率・利益率・資産構成
3. 点数の影響
- 総合評定値が高いほど、大規模工事の入札資格を得られる。
- 技術力・財務状況が良い企業ほど、受注機会が増える。
4. 点数を上げるための方法
- 完成工事高を増やす(X評点アップ)
- 技術職員の資格を強化(Z評点アップ)
- 社会保険・退職金共済に加入(W評点アップ)
- 財務健全性を向上(Y評点アップ)
5. 審査の流れ
- 決算終了後に申請し、審査結果は約1ヶ月で判明。
- 有効期限は1年7ヶ月、定期的に審査を受ける必要あり。
結論
経営事項審査は、公共工事の受注を左右する重要な制度であり、企業の信用度を示す指標となります。点数を向上させることで、入札資格を強化し、より有利な条件で工事を受注することが可能です。企業の状況に応じた戦略的な取り組みが求められます。
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