機械器具設置工事について
2025/06/07
機械器具設置工事とは、産業用設備や機械を設置・組み立てる工事のことです。例えば、製造ラインの機械、発電設備、搬送システムなどの設置がこれに該当します。大規模なプロジェクトでは、設計・製造・運搬・組立・調整までを一貫して行うことが一般的です。
この工事は単なる「機械の設置」ではなく、精密な調整や安全対策が求められるため、専門の技術者が作業を担当します。特に工場などでは、設置後の稼働テストやメンテナンス計画が重要なポイントになります。
目次
機械器具設置工事とは

わかりにくい業種の代表例
機械器具設置工事は、工場やプラントなどで機械設備を設置する専門的な工事です。具体的には、プラント設備工事、運搬機器設置工事、内燃力発電設備工事、集塵機器設置工事、給排気機器設置工事などが含まれます。
この工事は、単に機械を運搬して設置するだけではなく、現場での組立てや調整が必要な場合に該当します。例えば、トンネルや地下道の給排気設備の設置は機械器具設置工事に分類されますが、建物内の空調設備の設置は管工事に該当するなど、工事の種類によって分類が異なります。
また、機械器具設置工事を行うためには、建設業許可が必要であり、専任技術者の資格や実務経験が求められます。特に、技術士(機械部門)などの資格が必要となるため、専門性の高い分野です。

機械器具設置工事の特徴
建設業許可を取得することで、兵庫県内の企業は事業の拡大
機械器具設置工事は、単なる機械の運搬や固定ではなく、現場での組立てや調整が必要な工事です。例えば、プラント設備や発電設備の設置は機械器具設置工事に分類されますが、建物内の空調設備の設置は管工事に該当します。
他の業種との違い
業種 | 特徴 | 代表的な工事 |
機械器具設置工事 | 機械器具の組立て・設置・調整 | プラント設備工事、発電設備工事、集塵機器設置工事 |
とび・土工工事 | 重量物の運搬・配置 | クレーン作業、アンカー工事 |
管工事 | 配管設備の設置 | 空調設備工事、給排水設備工事 |
電気工事 | 電気設備の設置 | 変電設備工事、照明設備工事 |
機械器具設置工事は、他の専門工事と重複する場合があるため、工事の内容によって分類が異なります。例えば、トンネルの換気設備の設置は機械器具設置工事ですが、建物内の空調設備は管工事に分類されます。

他の業種と重複する場合の判断
機械器具設置工事と他の業種のどちらに該当するか判断する際には、工事の内容と施工方法を詳しく確認することが重要です。以下のポイントを参考にすると、適切な分類がしやすくなります。
✅ 判断のポイント
工事の目的が機械器具の設置なのか、それ以外(配管、電気、重量物運搬など)なのかが本来は重要。しかしそれでも悩む場合は次の基準を参考にしてください。
現場での組立てが必要か?
必要な場合 → 機械器具設置工事
不要で、単に設置するだけの場合 → 他の業種(とび・土工工事など)
機械が単体で機能するか?
単体で機能しない(複数の機器と連携が必要) → 機械器具設置工事
単体で機能する(例えばエアコンやポンプなど) → 他の業種(管工事など)
他の専門工事に該当しないか?
電気設備の設置が含まれる → 電気工事
配管設備の設置が含まれる → 管工事
重量物の運搬・固定が主な作業 → とび・土工工事
このように他の業種に該当する場合は他の業種として判断され、他の業種に該当しない場合に機械器具設置工事に該当します。

機械器具設置工事の許可の難易度
1.国家資格による専任技術者の道が限られる
他の建設業種(例:電気工事→電気工事施工管理技士、管工事→管工事施工管理技士)では、国家資格が複数用意されており、それらの取得により専任技術者要件を満たしやすい状況があります。
一方で、機械器具設置工事業に対応する国家資格は、技術士(機械部門)に限られており、極めて限定的です。
技術士(機械部門)は難易度が高く、実務者の中でも保有者が少ない。
電気電子部門や衛生工学部門等の技術士では代替できない。
▶ このため、一般的な施工管理技士等で代用できず、国家資格ルートでの取得が困難となります。
2.実務経験による要件充足もハードルが高い
技術士資格がない場合、実務経験での専任技術者就任を目指すことになりますが、これにも以下のような困難があります。
(1)実務経験の年数要件が重い
学歴 | 要件年数 |
大学(指定学科) | 3年以上 |
高校(指定学科) | 5年以上 |
上記以外(普通科など) | 10年以上 |
※指定学科は建築学・機械工学又は電気工学に関する学科をいいます。
※令和5年7月改正により、一部の施工管理技士については上記指定学科卒と捉える運用が始まりました。
建築施工管理技士 | 建築学 |
電気工事施工管理技士 | 電気工事 |
管工事施工管理技士 | 機械工学 |
(2)実務の範囲が曖昧
「機械器具設置工事」に該当する業務は、以下のような条件を満たす必要があります:
- 機械の据付・組立・アンカーボルト固定などを含む
- 整備・修理・メンテナンスは該当しない
- 施工実態のある契約書・請求書・工程表等による裏付けが必須
▶ 多くのケースで、「実際には該当工事をしているのに、書類上は判別できない」などの理由で、経験として認められない事例が見られます。
3.工事区分の判断が難しく、誤申請しやすい
機械器具設置工事は、他の複数業種と工事内容が重複しやすく、業種選定の判断が難解です。
【例】隣接業種との境界
業種 | 主な判断ポイント |
機械器具設置工事 | 機械そのものの据付・組立・設置が主目的 |
管工事 | 配管が主目的(例:空調設備の配管工事) |
電気工事 | 機械の動力供給ではなく、電源配線全体が目的 |
鋼構造物工事 | 架台の組立が主目的で、機械は付帯的なもの |
▶ 実際の申請において、「本当は機械器具設置工事だったが、管工事で申請していた」「鋼構造物工事で申請したが要件を満たさなかった」等の申請ミスが頻発します。
4.行政側の審査が厳格で、裁量が大きい
書類審査だけで判断できないケースが多く、補足資料(写真、図面、現場説明)が必要になることもあります。
地方整備局や都道府県の担当者ごとに判断基準に微妙な差があるため、同じ内容でも自治体によって許可が下りる・下りないの差が出ることもあります。
近年はコンプライアンス強化により、形式的な書類では通らない傾向が強まっています。
5.対象工事の受注企業が限定的である
一般住宅や小規模ビルの建築では、機械器具設置工事が発生する場面は少なく、一部のプラント・工場・ごみ処理施設・上下水道設備など、特定の発注者層に限られます。
したがって、そもそも許可を取得する企業が少なく、申請実績や審査ノウハウが蓄積されていない行政機関も多い状況です。
✅ 結論:機械器具設置工事業の許可取得が難しい本質
要因カテゴリ | 内容 |
資格制度の制限 | 技術士(機械部門)のみが対象で、施工管理技士等は非対応 |
経験証明の難易度 | 実務内容の誤解や書類不備により認定されにくい |
工種判定の複雑性 | 隣接業種との境界線が曖昧で誤申請のリスクあり |
審査対応のバラツキ | 行政対応が厳格かつ地域差がある |
市場ニーズの限定 | 性特殊工事であり、申請事例が少なく制度運用が安定していない |

機械器具設置工事の具体例
建設業法において「機械器具設置工事業」とは、機械器具の組立て、据付け、またはこれに伴う基礎工事等を行う工事を指します。これは、単に機械を設置するだけでなく、建築物や構造物の一部として恒久的に設置され、安定的かつ安全に機能するよう施工される工事を意味します。以下に、実務上よく見られる工事のうち、建設業法上「機械器具設置工事業」に該当するものを代表例として紹介します。
まず、プラント設備に関する据付工事が典型例として挙げられます。たとえば、発電プラントにおけるボイラーやタービンの据付け工事、化学プラントや食品工場における反応槽や熱交換器などの大型機械の据付け工事が該当します。これらは機械本体の搬入・組立て・設置に加え、基礎に対するアンカー固定や精密な据付作業を伴い、その機能を恒久的に建物内で発揮するものです。
次に、公共インフラに関連する設備工事として、ごみ焼却施設における焼却炉の設置や、上下水道処理場におけるポンプ設備や濃縮装置、脱水機の据付工事も該当します。これらもいずれも固定的に建屋内に設置され、基礎工事を伴いながら機械器具が安全に稼働するよう施工されます。
さらに、物流施設や工場に設置されるコンベヤー装置、自動倉庫設備(スタッカークレーン)、搬送装置、パレット自動搬送機(AGV)などの据付工事も機械器具設置工事に含まれます。特に、建物の構造や床面に対して恒久的に設置され、搬入・組立・試運転を含む工事であれば、十分に該当すると判断されます。
また、昇降機関連の工事、すなわちエレベーターやエスカレーター、タワーパーキング(立体駐車装置)などの設置工事も、機械器具設置工事に分類されます。これらは電動駆動装置や制御盤等の機械機構を備え、建築物に恒久的に組み込まれる設備であるため、機械器具の設置工事としての性格が強く表れています。
そのほか、クリーンルームにおける恒温恒湿装置の設置や、舞台装置(回転舞台、昇降機構)の据付工事、産業用ロボットの定置型設置(アンカー固定され、建屋内に恒久設置されるもの)も、機械器具設置工事業の対象となります。いずれも特殊機械が建築物内に安全に設置され、長期にわたり稼働するための工事が対象です。
一方で、家庭用エアコンの設置や、機械の単なる調整・整備、保守点検、製造ラインの操作指導といった作業は、「工事」とは認められず、機械器具設置工事には該当しません。重要なのは、据付や組立といった工事性・恒久性が伴うかどうかであり、単なる搬入や設置作業では許可の対象とはなり得ません。
このように、機械器具設置工事業は対象となる工事が広範である一方、他業種(管工事業、電気工事業、鋼構造物工事業など)と内容が重なることも多いため、実務においては「工事の主目的」や「固定設置の有無」「恒久性の有無」といった観点からの判断が必要不可欠です。適切な業種選定を行うには、契約書・見積書・施工写真・工程表などを総合的に精査し、工事の実態を明確に証明することが求められます。

機械器具設置工事と間違えやすい他業種の工事例
以下に、「機械器具設置工事業」と間違いやすい他業種の工事について、具体的な工事例とともに、なぜ機械器具設置工事に該当しないか(または、他業種であるか)を解説します。
1.配管中心の機械設置工事(→正しくは「管工事業」)
たとえば、空調設備のチラー(冷却機)や冷温水発生機を現場に据え付ける際、機器本体を固定する作業が含まれていたとしても、主たる作業が冷媒管・水配管・ドレン管の接続である場合は、これは機械器具設置工事ではなく管工事業に該当します。
同様に、給水ポンプや加圧給水装置の更新工事において、据付に伴うアンカー固定や搬入作業がある場合でも、主眼が給水管・給湯管の改修や接続である場合は、管工事に分類されます。
2.電源接続が主目的の工事(→正しくは「電気工事業」)
大型のモーターや制御盤、配電盤の更新工事のうち、据付そのものよりも電源線の接続や幹線工事が主となっている場合は、電気工事業に該当します。機器自体を設置する作業があっても、それが補助的であり、工事の中心が電気的な配線や接続であるならば、機械器具設置工事とは言えません。
また、太陽光発電設備や受変電設備を設置する工事においても、基礎に機器を固定する工程があったとしても、工事の本質が発電・送電系統への接続にある場合、やはり電気工事に分類されます。
3.架台や鉄骨が中心となる設備設置(→正しくは「鋼構造物工事業」)
たとえば、屋上に設置する換気装置や大型のタンクなどについて、基礎の上に大がかりな鋼製架台を組立て、その上に機械を載せるという工事があります。このような場合、据付の主体が構造物としての鉄骨組立てであるならば、これは「鋼構造物工事業」に該当します。
特に、機械本体が軽量であったり、プレハブ構造の支持台が中心である場合など、据付対象の本質が機械よりも構造物であると判断される場合には、機械器具設置工事ではなく鋼構造物工事と見なされることがあります。
4.単なる搬入・組立・設定作業(→建設業の対象外)
市販されている製造機械や業務用装置を、工場内や事務所内に搬入して開梱し、所定の位置に設置して試運転を行うといった作業で、基礎工事やアンカー固定、据付金物の取付け等が伴わない場合には、これは建設業に該当しない単なる機器設置作業とされます。
このような作業は「建設工事」とはみなされず、機械器具設置工事業の許可対象外となるため、建設業の許可は不要です。
5.建築の一部としての設備設置(→正しくは「建築一式工事」)
たとえば、工場の新築工事の中で自動搬送ラインを設置する場合、建物全体の施工と一体的に機器が配置されるケースがあります。この場合、据付作業が建築工事の一部として位置づけられ、工事契約も建築一式で包括されているならば、個別に「機械器具設置工事業」として評価されないことがあります。
つまり、建築一式工事の付帯工事の一部として取り扱われることがあるため、機械器具設置工事の経験として分離しにくいという実務上の問題が生じやすい工種でもあります。
6.定置型でない機器の設置(→建設業の対象外)
事務用プリンタ、コピー機、給茶機などのオフィス機器、あるいは店舗での冷蔵ショーケースの設置などは、たとえ据付作業があったとしても、アンカー固定されない・移動可能・恒久的設置でない場合は、建設業法上の「工事」に該当せず、機械器具設置工事業の対象外となります。
まとめ
機械器具設置工事業と誤認されやすい工事の多くは、「工事の主目的が何か」「恒久性があるか」「構造物との一体性があるか」という点で、他の業種や建設業の範囲外に分類されるものです。したがって、建設業許可の業種選定にあたっては、請負契約書、施工内容、使用する資機材、作業工程、設置状況(固定かどうか)などを総合的に検討し、法的に適切な業種区分を明確に判断することが重要となります。
機械器具設置工事における現場配置技術者の実務と法的要件

はじめに:専門性が問われる機械器具設置工事
機械器具設置工事は、他の建設業種と比較して特有の施工管理が求められる分野である。設置対象は主に大型の重量機械やプラント設備であり、組立、据付、固定、試運転といった作業工程に高度な知識と安全管理が必要とされる。現場にはこれらの工事を適切に指導・管理する「主任技術者」または「監理技術者」の配置が義務づけられており、技術者の資質と法令遵守が、品質と安全性を左右する。特に近年は、公共工事のみならず民間工事でも、技術者の配置状況を重視する発注者が増加傾向にある。

機械器具設置工事に必要な配置技術者の区分と役割
建設業法では、請負金額や工事種別に応じて、現場に配置すべき技術者の区分が定められている。機械器具設置工事の場合、請負代金が500万円以上(消費税含む)の工事では、必ず「主任技術者」の配置が必要となる。さらに、元請として特定建設業許可を有する業者が5,000万円以上の下請契約を締結して工事を行う場合には、「監理技術者」の配置が義務となる。主任技術者は現場の技術的管理と指導、監理技術者は下請管理を含む全体の施工統括責任を負う。この両者の責務は明確に異なり、配置基準も厳密に運用されている。

主任技術者・監理技術者となるための資格と経験
主任技術者や監理技術者となるには、一定の実務経験か、または国家資格の保有が必要となる。しかし、機械器具設置工事業は他業種と異なり、施工管理技士の対応区分が存在しないため、技術士(機械部門)や、学歴+実務経験によって該当資格を充足する必要がある。例えば、機械工学系の大学卒業者であれば3年以上の実務経験が必要であり、資格がなく学歴もない場合は、10年以上の経験が求められる。監理技術者については、主任技術者の要件に加え、1級建設機械施工技士等の該当資格が必要と誤解されがちだが、現実には専任技術者の兼務が中心であり、要件確認が個別に求められる。

企業内の適正配置と常駐義務の実務対応
現場配置技術者には、原則として工事現場への「常駐」が求められる。ただし、常駐の定義はあくまで「工事の技術管理上、支障のない程度の継続的な現場対応」を意味し、事務所からの遠隔指示や複数現場の兼務は原則認められていない。企業は施工体制台帳や打合せ記録などで、適切に配置していることを証明する義務がある。また、主任技術者が長期離脱する際には代替配置が必要であり、無配置状態は建設業法第26条違反となる。人材が不足している場合は、グループ会社間の出向制度の活用も一部で認められるが、雇用関係の確認と要件の充足ができているかの確認が不可欠である。

配置技術者の管理体制と行政指導の動向
最近の国土交通省や都道府県の立入検査では、配置技術者の実在確認が重点的に行われている。特に、施工体制台帳への虚偽記載、実際には現場に来ていない技術者の形式的配置などが問題視され、業者名公表・指名停止といった重い行政処分が科される事例もある。現場技術者の出勤簿や現場写真、指導記録などの整備が重要であり、社内管理部門との連携が不可欠である。元請業者は、下請会社の技術者配置についても監督責任を負うため、形式的な書類確認にとどまらず、実態確認を含めた管理体制の強化が求められている。

適切な技術者の配置が出来ていなかった場合には
機械器具設置工事を含むすべての建設工事においては、建設業法に基づき、請負金額や工事内容に応じて「主任技術者」あるいは「監理技術者」を適切に現場に配置することが義務付けられています。これは、工事の品質・安全性の確保、下請業者への指導、発注者との技術的調整などを、専門知識を有する技術者が責任をもって担うための制度です。
この義務に違反し、例えば「主任技術者を配置していなかった」「配置していたと届け出ていたが実際には現場に常駐していなかった」「有資格者ではない者を配置していた」等が判明した場合には、建設業法第26条または第26条の2(監理技術者の配置)に基づく違反となり、以下のような処分や罰則が科される可能性があります。
1.行政処分(指示処分・営業停止・許可取消)
まず、最も基本的な処分は指示処分です。これは、違反事実に対して是正措置を命じるもので、必要に応じて技術者の再配置や体制台帳の訂正、社員教育の実施などを求められます。
次に、違反の内容が重大である、あるいは繰り返された場合には、営業停止処分が科されることがあります。営業停止処分の期間は軽微なもので7日間程度、重大なものでは30日以上に及ぶこともあり、その間は一切の建設工事を請け負うことができません。特に、公共工事を多く受注している事業者にとっては、受注機会の損失という重大な影響があります。
さらに、虚偽の施工体制台帳の提出、実在しない技術者の名義借り等の悪質な行為が認定された場合には、建設業許可の取消処分が下されることもあります。許可取消は、その業種における営業そのものができなくなるため、事業継続に深刻な影響を与えます。
2.指名停止処分(公共工事における重大制裁)
行政処分とは別に、国や地方自治体などの発注機関は、発注者独自のルールに基づき、技術者配置義務違反を理由に指名停止処分を科すことがあります。これは、一定期間その発注機関の入札に参加できなくなる措置であり、事実上の経済的制裁です。
例えば、国土交通省や地方整備局では、主任技術者不在、監理技術者の名義貸し、配置義務違反が判明した場合に、3か月〜12か月程度の指名停止が科されるケースがあります。処分歴は公表され、自治体間で共有されるため、単発の違反でも複数の発注機関から同時に指名停止を受けることもあります。
3.刑事罰(虚偽申請や名義貸しがある場合)
虚偽の内容をもって建設業許可を取得したり、名義貸しによって技術者を装っていた場合には、建設業法第50条の罰則規定により、「6か月以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されることがあります。これは刑事罰であり、企業だけでなく、個人(代表者、管理者、虚偽に関与した社員)も処罰の対象になります。
特に近年では、監理技術者に関する名義貸しや、出向者による偽装配置(実際には雇用関係がないにもかかわらず配置したと偽る行為)について、行政のチェック体制が強化されており、悪質と判断された場合には刑事告発に至る事例も存在します。
4.社会的信用の低下とその影響
罰則の法的側面とは別に、技術者配置義務違反が発覚した場合には、企業の信用失墜という重大な経済的影響も避けられません。行政庁からの処分が公表されると、元請企業としての信頼を失い、民間工事においても受注機会が減少するリスクが高まります。また、元請からの下請指名が減る、元請として発注者から排除される、金融機関からの評価が下がるといった間接的な影響も無視できません。
まとめ
適切な技術者の現場配置は、単なる形式的な要件ではなく、建設業者としての法的責務であり、また工事品質と安全確保の根幹です。違反した場合には、行政処分、指名停止、刑事罰といった重い制裁が科される可能性があるため、技術者の配置管理、施工体制台帳の正確な整備、常駐実態の確認は、建設業者が最優先で対応すべき重要事項といえます。