技術と社会貢献の両輪で挑む!兵庫県工事入札の評価ポイントとは
2025/05/31
公共工事への参入を目指す建設業者にとって、入札参加資格の格付けは避けて通れない関門です。兵庫県においても、工事種別ごとに設定された格付区分に基づき、入札参加の可否が決定されます。その格付の決定要素には、財務状況や経営事項審査(経審)の評点だけでなく、「技術評価」や「社会貢献評価」といった“目に見えにくい力”も重要な役割を果たしています。本稿では、この2つの評価軸について、制度の構造から加点の具体例、実務上の工夫に至るまで、わかりやすく解説します。
目次
兵庫県における格付評価の全容とは

技術評価:資格・成績・提案・技術登録がカギ
兵庫県では、下記のような項目が「技術評価数値」として設定されており、それぞれが点数化されます。
● 技術評価の主な加点項目
評価項目加点備考
ISO9001認証取得(16点)・・全営業所での認証が必要
CPDS/CPD単位取得職員の在籍(6点/工種ごと)・・直近5年間の学習実績が対象
建設キャリアアップシステム(CCUS)事業者登録(6点)・・登録証明書類の提出要
技術提案・VE提案の実績最大(48点)・・1件8点、上限6件
ひょうごの土木技術活用システム・NETIS登録(6点)・・自社開発技術が対象
工事成績平均点(最大120点)・・8年分の平均点が80点以上で90点加点等

社会貢献評価:地域への参加が得点に直結
「社会貢献評価数値」として加点される項目には、地域活動や環境、雇用、多様性への対応が反映されます。
● 主な社会貢献加点項目(抜粋)
障害者雇用(法定数以上)(最大40点)・・報告書の提出必要
ISO14001・エコアクション21取得(16点)・・全営業所で取得要
女性活躍促進(ミモザ企業等)(8点)・・協定または認定
子育て応援協定締結(8点)・・県との協定締結
災害応急対策協定締結(最大22点)・・建機保有台数で点数変動
就業体験(高校生・専門校生等)受入(8点)・・実施報告の確認で加点
若年技術者の新規採用(最大30点)・・採用人数・男女別で変動
建設業暴力追放活動(6点)・・受講修了書の提出要
✅ 正確な理解のポイント
- 寄附(10万円以上)も加点対象になります(県事業・団体への金銭・物資提供等)。→ 6点加点
- 刑務所出所者や保護観察対象者の雇用実績も評価対象であり、雇用や下請契約の形式で最大16点。
- 地域貢献活動(清掃、美化、除草など)を実施した場合も6点加点が認められます(参加団体からの報告書提出必須)。

加点のタイミングと有効期間に注意
評価項目の多くには、「加点期間」(1~3年間)が設定されています。加点は原則として実績が確認された年度の翌年度から有効になります。
加点適用例:
令和5年4月1日~令和6年3月31日までに要件を満たした活動:
→ 令和6年10月1日から令和8年9月30日までの名簿において加点
また、中間年での更新申請時にも実績が評価対象となるため、毎年の活動・証明書類の保管は不可欠です。
技術評価数値について

① ISO9001認証取得
加点:16点/加点期間:1年間
概要:品質マネジメントシステムの国際規格である「ISO9001」の認証を受けていることを評価。
要件:申請時に本店および全ての支店等の営業所が、JABまたは同等の相互承認機関により認証されている必要あり。
提出書類:認証書および附属書の写し。
ポイント:営業所の一部だけでは不可。全営業所の取得が必須。

② CPDS・CPD単位取得者の在籍
加点:6点(工種ごと)/加点期間:1年間(過去5年)
概要:職員の継続教育・能力向上への取組を評価。
要件:希望する工種ごとに、定められた制度の学習単位を取得した職員の在籍が必要。
土木:CPDS(20ユニット以上)
造園:造園CPD(50単位以上)
建築:建築CPD(50時間以上)
電気・管工事:建築設備系団体の定める一定単位以上(12~50単位)
提出書類:該当団体発行の単位取得証明書。
ポイント:技術資格そのものでは加点されず、「学習実績」が評価される。

③ 建設キャリアアップシステム(CCUS)事業者登録
加点:6点/加点期間:1年間
概要:国が推進する建設技能者の能力・就業履歴を可視化するシステムへの参加状況を評価。
要件:CCUSに事業者として登録済であること。
提出書類:ログイン画面および利用料明細画面の写し。
ポイント:CCUS登録は技能者評価や公共工事受注における重要指標となっている。

④ さわやかな県土づくり賞受賞
加点:16点/加点期間:2年間
概要:兵庫県主催の建設工事における環境・景観配慮を評価する表彰の受賞歴。
要件:過去に当該賞を受賞したこと。
提出書類:不要(県が確認)。
ポイント:県が優良工事を対象に選定する賞で、環境調和型施工の実績が評価される。

⑦ 兵庫県若手優秀施工者賞受賞
加点:2点/加点期間:2年間
概要:同上のうち、若手技術者(概ね40歳以下)の表彰。
要件:該当する若手技術者を雇用していること。
提出書類:不要(県が確認)。
ポイント:若手の育成・表彰が企業評価の一要素に。

⑧ ひょうごの土木技術活用システム・NETIS登録
加点:6点/加点期間:1年間
概要:新技術の登録・活用を通じた技術力のアピール。
要件:自社開発の技術が「ひょうごの土木技術活用システム」または「NETIS(国交省)」に登録されていること。
提出書類:NETIS登録のみ要提出(写し)。
ポイント:技術開発能力がある企業としての評価。

⑨ 技術提案・VE提案
加点:8点×件数(上限48点)/加点期間:2年間
概要:総合評価落札方式等における技術提案やVE提案の実施・採用実績を評価。
要件:以下のいずれか
ア 県が発注する建設工事の入札参加申込時において技術提案(総合評価落札方 式における技術提案(施工計画に係る提案は除く。)に限る。)又はVE提案(入 札時VE)を行い、提案内容が技術提案を審査する機関から適正と認められ当 該提案をもって入札した場合
イ アに該当し、落札者となった場合
ウ 県と契約した建設工事の施工時においてVE提案(契約時VE)を行い、提 案内容が技術提案を審査する機関から一定の水準に達していると認められた 場合
エ ウに該当し、当該提案が採用された場合
なお、点数は、上記の要件に該当するごとに8点加点する(上限は48点とする。)
提出書類:不要(県が確認)
ポイント:創意工夫による技術改善を数値で評価する最大の項目。

⑩ 建設労働災害防止活動
(1)講習等参加:6点
(2)安全指導者の在籍:6点
(3)新規指導者の在籍:4点
加点期間:いずれも2年間
概要:労働災害防止への取組(講習参加、安全指導体制の構築)を評価。
要件:建災防兵庫県支部等による活動への参加実績や指導者の在籍。
提出書類:不要(県が確認)。
ポイント:安全管理体制の構築が高評価のカギ。

⑪ 工事成績評価点
加点:最大120点(平均85点以上)~マイナス40点/加点期間:1年間
概要:直近8年間に県発注工事を完成させた場合の成績評定点の平均。
加点基準(例):
85点以上:120点
80~84点:90点
75~79点:60点
70~74点:30点
65~69点:0点
60~64点:-20点
59点以下:-40点
提出書類:不要(県が確認)
ポイント:平均工事成績点の算定 各工種の入札に参加を希望する者の平均工事成績点は、その者が名簿更新日の 属する年度の直前8年度間に完成した当該工種の県発注建設工事の工事成績評 定点の平均点(小数点以下切捨て)とする。 共同企業体の構成員としての施工実績を有する者については、当該共同企業体 の工事成績評定点も含めて平均工事成績点を算定する。
【社会貢献評価項目 一覧と詳細解説】

① 障害者雇用
加点:最大40点/加点期間:1年間
概要:障害者雇用促進法に基づく障害者雇用状況を評価。
要件:法定雇用率を満たすかどうか、または報告義務のない中小事業者でも雇用実績がある場合に加点。
報告義務 |
障害者の雇用状況 |
点数 |
あり | 法定雇用障害者数以上 | 40点 |
法定障害者数の3分の2(1人未満切り捨て。以下同じ)以上 |
24点 | |
法定障害者数の3分の1以上3分の2未満 | 16点 | |
法定障害者数の3分の1未満 |
8点 | |
なし | 1人以上 | 20点 |
提出書類:障害者雇用状況報告書(様式第6号)写し。
ポイント:法定数を超える雇用で最大点が付与される。

② ユニバーサル社会づくりへの参画
加点:8点/加点期間:1年間
概要:重度障害者の雇用または「ハート購入企業」認定を評価。
要件:
- 「ひょうご障害者ハート購入企業」認定
- 重度肢体不自由者等を10時間以上雇用し、所定書類で申告
提出書類:不要(県が確認)
ポイント:障害者雇用の中でも、特に重度の障害に対応した雇用が対象。

③ ISO14001またはエコアクション21取得
加点:16点/加点期間:1年間
概要:環境マネジメント体制の構築を評価。
要件:全営業所でISO14001またはエコアクション21の認証取得。
提出書類:認証証および附属書の写し。
ポイント:ISO9001とは別に独立した評価項目。
社会貢献活動等

(1)県と災害応急対策業務に関する協定等締結
加点:12~22点/加点期間:2年間
要件:
ア 災害発生時に、県から支援要請できる次の協定締結等をした場合
(ア) 災害時における応急対策業務に関する協定締結
(イ) 災害対策等緊急連絡網への登録
イ 緊急小規模工事請負契約を締結した場合
ウ 県が管理する道路又は兵庫県立但馬飛行場における除雪業務又は凍結防止 剤散布業務の委託契約を締結した場合
エ 被災建築物応急危険度判定士の在籍
格付けに使用する経審の建機保有台数によって点数が決定。
経審機械保有台数 | 点数 |
5台以上 | 22点 |
4台 | 20点 |
3台 | 18点 |
2台 | 16点 |
1台 |
14点 |
0台 | 12点 |
提出書類:一部要(判定士関係)

(4)県が管理する道路、河川等の公共施設への愛護活動
加点:6点/加点期間:2年間
要件: 県が管理する道路、河川等の公共施設において、清掃・美化、除草、草刈り、植 樹(低木)管理、植栽等の快適な生活環境を創出する活動について、年間の延べ活動時間(「活動時間×活動人数」の年間合計)が60時間以 上あったことが確認でき、土木事務所等から報告されたもの。
提出書類:不要(県が確認)

(5) 県の関係事業に対する支援(寄附)
加点:6点/加点期間:2年間
要件:県又は県の関係事業(県が実施する事業、県との協定に基づいて関係団体が実施 する事業及び県が関係団体に委託した事業)に対して、10万円以上の寄附(土地・ 建物、物資の提供等で金銭換算できるものを含み、無償貸与を除く。)を行ったこ と。
なお、複数の団体への寄附が確認された場合であっても、重複加点は行わない。
対象事業例:ふるさと寄附金、兵庫ボランタリー基金(R5年3月9日まで)、ひょうご子ども・若者応援団。
提出書類:不要(県が確認)

(6) 就業体験事業協力
加点:8点/加点期間:2~1年間
要件:次のいずれかに該当することとし、加点期間について、アからウまでに該当する 場合にあっては2年間、エに該当する場合にあっては1年間とする。
ア 学校教育法(昭和22年法律第26号)第6章に定める県内の工業系又は農業系 の学科のある高等学校、同法第10章に定める県内の工業高等専門学校で実施さ れた高校生就業体験事業で生徒を受け入れた場合
イ 学校教育法第11章に定める県内の専修学校、同法第12章に定める県内各種学 校における建設業及び建設関連のコースで実施されたインターンシップ(開設 時間48時間以上)で生徒を受け入れた場合
ウ 職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)に基づいて設置された県立職業 能力開発施設で実施された公共職業訓練インターンシップ事業で訓練生を受 け入れた場合
エ アからウまでのいずれかの就業体験事業等で生徒等を受け入れた者を下請 負人とし、又はこれに該当した者を下請負人とした工事請負契約を締結し、そ の実績を証明した関係書類(就業体験事業等実施報告書等)を土木 部契約管理課に提出した場合。ただし、下請業者が就業体験事業等で生徒を受 け入れた期間が、当該下請契約の期間内である場合に限る。
なお、複数の要件に該当する場合であっても、重複加点は行わない。
下請実績でも対象(上記エ)
提出書類:不要(県が確認)

(7) 若年技術者の新規採用
加点:4~30点/加点期間:1年間
要件:次のアからエまでのすべてを満たすこと。
ア 県内に主たる営業所を置く建設業者であること。
イ 採用日(原則、雇用保険資格取得日)において満29歳以下の建設技術職(技 術者・技能労働者。事務以外の建設工事の施工に係る職種で、資格の有無を問 わない。)を雇用期間の定めのない正社員として採用したこと。
ウ 土木部契約管理課建設業班が行う若年者採用状況申告書の受付に おいて、前年度等の雇用状況(申告書に健康保険、雇用保険等の証明書類を添 付)を申告すること。
エ ウの申告時点において、イに該当する者を継続雇用していること。
男女別人数で加点(最大5人)
提出書類:不要(県が確認)

(8) 地域安全まちづくり活動
加点:6点/加点期間:2年間
要件:ひょうご地域安全まちづくり推進協議会の会員団体が実施する地域安全まちづ くり活動に参加して安全で快適なくらしを実現するための活動に取り組んだこと。
提出書類:不要(県が確認)

(10) 建設業暴力追放活動
加点:6点/加点期間:1年間(実質3年有効)
要件:建設工事入札参加資格審査等申請時に、建設工事入札参加資格審査申請要領に定める 期間(3年間)内に公益財団法人暴力団追放兵庫県民センターが実施する不当要求防止 責任者講習会又は兵庫県建設業暴力追放協議会及び同協議会の賛助会員団体が実施す る暴力団追放研修会に参加して暴力団による不当な影響の排除に取り組んだこと。
提出書類:受講修了書の写し

兵庫県における技術・社会貢献評価数値の必要性
兵庫県では、平成27年7月から、入札参加資格者格付けとは別に、「一定金額以上の工事」に参加する際の絶対的な要件として、
技術・社会貢献評価数値(加点合計)を一定点以上有していること
を求めています。
この評価数値が満たされていなければ、たとえ格付等級が該当していても、その入札には参加できません。

入札金額区分ごとの「最低必要点数」一覧(令和4年10月以降適用)
入札区分 | 入札参加資格要件とする技術・社会貢献評価数値 | ||
一般土木 | 公募型一般競争入札(2億5千万円以上) | 180点以上 | |
制限付き一般競争入札 | 7千万円以上 | 110点以上 | |
2千万円以上 | 60点以上 | ||
1千万円以上 | 10点以上 | ||
建築一式工事 | 公募型一般競争入札(4億5千万円以上) | 100点以上 | |
制限付き一般競争入札 | 2億以上 | 40点以上 | |
1億以上 | 30点以上 | ||
5千万円以上 | 5点以上 | ||
電気・管工事 | 公募型一般競争入札(2億5千万円以上) | 80点以上 | |
制限付き一般競争入札 | 1億以上 | 70点以上 | |
5千万円以上 | 30点以上 | ||
1千300万以上 | 20点以上 |
減点項目あり、その他総合評価方式にも影響

評価の中には加点されるだけでなく減点されるものもあります。主には入札契約上不誠実な行為(落札後入札辞退や、施工不良など)が原因です。
また、総合評価方式の評価においても技術・社会貢献評価点数は影響をします。併せて技術・社会貢献評価ではないですが、総合評価方式のにある似たような評価項目についても少し触れておきます。

総合評価方式における技術・社会貢献評価項目
総合評価落札方式においては、施工計画等に加え、技術・社会貢献評価数値(工事成績を除く。)の取得状況をその評価項目の一つとしている。(施工契約評価型、施工能力評価型)
施工計画評価型(企業の施工能力)
評価項目 | 配点 | 評価方法 | |
社会貢献点数 | 3点 | 100点以上 | 3.0点 |
80点以上100点未満 | 2.3点 | ||
60点以上80点未満 | 1.6点 | ||
40点以上60点未満 | 0.9点 | ||
40点未満 | 0点 |
施工能力評価型(企業の施工能力)
評価区分 | 配点 | 評価方法 | |
社会貢献点数 |
2点 | 100点以上 | 2.0点 |
80点以上100点未満 | 1.5点 | ||
60点以上80点未満 | 1点 | ||
40点以上60点未満 | 0.5点 | ||
40点未満 | 0点 |
また、総合評価方式においては地域固有の社会貢献活動や技術者育成、配置予定技術者の工事成績などの加点も。

令和7年10月1日入札公告分より適用の総合評価方式の制度改正
評価項⽬「若⼿・⼥性技術者の育成」の名称及び評価⽅法の制度改正
更なる技術者の確保を促すため、若⼿・⼥性技術者以外に、雇⽤している技術職、技能労務 者や事務職員の資格取得など新たな技術者の育成も含め、技術者の技術⼒向上や確保する取 組に対しても評価する制度改正を⾏う。
- 評価項⽬名称を「技術者の育成」に改正
- 建設業法に規定された監理技術者として従事できる国家資格を取得してから8年以内の技術者(新たに資 格取得した技術者【国家資格取得者】)を配置した場合の評価⽅法を追加し、配点を改正
評価区分 | 評価項目 | 配点 | 評価方法 | ||||
若手・女性技術者 | 国家資格取得者 | 計 | |||||
地域建設業者の育成 | 技術者の育成 | 1点 | 若手・女性技術者 | 0.5点 | 国家資格取得者 | 0.5点 | 1点 |
上記に該当しない | 0点 | 0.5点 | |||||
上記に該当しない | 0点 |
国家資格取得者 |
0.5点 | ||||
上記に該当しない | 0点 | 0点 |

評価項⽬「配置予定技術者の⼯事成績」の評価⽅法の制度改正
現場代理⼈(建設業法第26条に規定された主任技術者として従事できる国家資格(実務経験で認定される資格を除く)を有してた 場合のみ)として従事した⼯事成績の評価(加点)を、主任技術者等と同等とする。
評価区分 | 評価項目 | 配点 | 評価方法 | |||
配置予定技術者の技術力 | 工事成績 | 4点 | 申告する工事件数に応じて、右欄の点数を加算する | |||
工事1件当たりの得点(①②あわせて2件) |
① |
主任(監理)技術者、専任補助者または現場代理人として従事した工事 |
||||
85点以上 | 2.00点/件 | |||||
80点以上85点未満 | 1.5点/件 | |||||
75点以上80点未満 | 1.00点/件 | |||||
70点以上75点未満 | 0.50点/件 | |||||
② | 従事役職を問わず、70点未満、該当工事なし |
0.00点/件 |