建設業許可と経営事項審査
2025/05/03
建設業とは?
建設業とは、建物の建築・土木工事・設備工事などを請け負い、施工する事業のことを指します。日本では、一定規模以上の建設工事を請け負うには「建設業許可」を取得する必要があります。これは建設業法によって定められており、以下のような要件が必要です。
・経営業務の管理責任者がいること
・専任技術者がいること
・財産的基礎があること
・欠格要件に該当しないこと
経営事項審査(経審)とは?
経営事項審査(経審)は、公共工事を受注する建設業者に義務付けられている制度です。公共工事の入札に参加するためには、この審査を受けて「総合評定値(P)」を取得する必要があります。
経審では、以下のような項目が評価されます:
・経営状況分析(Y):財務内容から経営の安定性を判断
・経営規模(X):完成工事高・職員数などの規模
・技術力(Z):技術者の人数や保有資格
・社会性等(W):法令遵守や保険加入状況など
最終的にこれらの項目から計算される 総合評定値(P) が、入札における業者選定の重要な基準となります。
目次
建設業許可と経審の関係

建設業許可がなければ経審は受けられない
建設業許可がなければ経営事項審査(経審)を受けられない理由は、経審が「許可業者」を対象とした制度だからです。以下に詳しく解説します。
◆ 経審の目的は「公共工事の受注資格の判定」
経審は、国や自治体などの公共機関が建設業者を選定する際の指標とするために設けられた制度です。主な目的は:
建設業者の経営状況、技術力、社会性などを数値化
入札参加資格(いわゆる格付け)を決定する基礎資料とする
◆ 経審の受審資格は「建設業許可業者」に限定
建設業法の制度上、経審は 許可を受けた業者(=建設業許可業者) しか申請できないと明記されています。
法的根拠(建設業法施行規則 第27条)
経営事項審査は、建設業の許可を受けた者が、国または地方公共団体等の建設工事を請け負おうとするときに必要とされる。
つまり、無許可業者はそもそも公共工事を請け負う資格がなく、その前提となる経審の対象外という扱いになります。
◆ なぜ「許可業者限定」なのか?
理由は以下の通りです:
建設業許可によって最低限の信用・能力を担保している
→ 経管・技術者・財産要件などをクリアしている前提だから
公共工事は税金で行われるため、高い信頼性が要求される
→ 許可のない業者は信頼性や法令順守面で不安がある
経審は許可内容に基づいて審査項目が構成されている
→ 例えば「許可業種別の完成工事高」など、許可を前提としたデータが必要
◆ 流れとしてはこうなる:
①建設業許可を取得する(まずこれが前提)
②許可業者として実績を積む
③経営事項審査を受ける(公共工事入札の準備)
④格付け(総合評定値P)を得て、入札参加資格を得る
②は④の後でも可能。
昔は指名入札が主流だったこともあり、2年縛りといって登録してすぐは入札に参加できないこともありましたが、現在では公募型入札が主流になったため許可取得後即経審を受けて入札に参加するということも可能なことも増えています。
どちらにしても経審(入札)を目指すなら、まずは「建設業許可の取得」が最初のステップとなります。

公共工事の受注を目指すなら、経審は事実上の必須要件
公共工事の受注を目指す場合、経営事項審査(経審)は事実上の必須要件となっています。経審を受けていなければ、そもそも入札のスタートラインに立てません。
✅ 法的な位置付け・・・建設業法第27条に基づく「公共工事受注のための客観的評価」
✅ 入札参加の前提条件・・・原則としてすべての国・自治体発注工事の入札参加資格申請に必要
✅ 客観点と主観点での使用・・・入札参加資格のうち「客観点」評価の根拠として使用
✅ 総合評価方式にも影響・・・技術力・社会性などがスコア化され、加点または減点に直結

経審の結果(総合評定値)は、自治体や発注機関の格付けにも影響
発注機関(国・都道府県・市町村など)は、入札に参加できる企業を「等級(ランク)」で分類しており、P点はその等級決定の客観的指標として用いられます。
発注機関がP点を用いる理由
目的 | 内容 |
公平な評価 | 主観によらず「点数」で機械的に評価できる |
発注リスクの回避 | 経営不安・財務不良な業者を排除できる |
適正な受注分配 | 高ランク=大きな工事、低ランク=小さな工事へと誘導 |
業者の技術力・体制の確認 | Z点やW点で資格・施工実績、社会性なども含めて評価可能 |

行政書士に依頼する主なメリット
① 書類作成と提出の手間が大幅に減る
経審は決算変更届・経審申請書・工事実績・技術者一覧・保険資料など、膨大な書類が必要
行政書士が代わりに作成・整理・役所への提出まで一括対応
→ 社内の経理・総務担当の負担を大幅に軽減
② ミスや不備による審査遅延を防げる
経審の書類はミスがあると「差し戻し」や「再提出」が必要になり、スケジュールに大きな遅れ
行政書士は各自治体・審査機関の最新の提出ルールや様式に精通しているため、抜け漏れなし
書類チェックの精度が高い
→ 一度で通る申請を実現しやすい
③ 点数最大化(P点向上)をアドバイスしてくれる
経審はただ出せばいいわけでなく、点数(P点)=受注できる工事規模を決める重要指標
行政書士は、以下のような点数向上策の提案が可能:
技術職員の配置や資格の見せ方
財務指標の見直し(役員報酬、借入整理など)
W点(社会性等)の加点要素(保険、ISO、建退共、CCUSなど)
適切な工事実績の提出方法→ 同じ経営状況でも、行政書士の介入で点数が伸びることもある
④ 地域の審査窓口とのやりとりに慣れている
経審の窓口対応は、自治体や県事務所ごとに運用が微妙に異なる地元に強い行政書士なら、各窓口の担当者や傾向を把握している→ 審査通過がスムーズになり、余計な待機時間・やりとりが減る
⑤ 年度更新や変更届などの継続サポートも可能
経審は「毎年更新」が必要であり、決算変更届や技術者変更届も発生する行政書士に継続依頼すれば、
決算後すぐに対応してもらえる
技術者の異動・退職などにも迅速に対応
書類の電子データ・バックアップも整う
建設業許可を取得する際の「主な難関」

経営業務の管理責任者(経管)の要件
最も難関とされることが多い要件です。
過去に建設業の経営に5年以上携わっていた経験などが必要で、以下のような条件を満たす人がいなければなりません。
建設業許可業者の役員として5年以上の経験
個人事業主としての経営経験(証明書類が必要)
上記に準ずる補佐経験(役員に準じる地位)など
問題点:
・経験を証明する書類(登記簿、契約書、請求書など)が不十分
・経営実績はあるが形式上「役員」でなかったため認められないケース

専任技術者の要件
技術力のある者が常勤していることが求められます。具体的には:
国家資格(例:1級建築施工管理技士など)を保有している者
実務経験(例えば10年)を積んでいる者
よくある問題点:
・資格が該当業種に合っていない
※土木一式が欲しいけれど実務経験はとび・土工工事業しか充足していないなど
・実務経験を証明する資料が不足している(工事契約書、請求書等)
※実務経験を積んだ会社が倒産し証明する書類がないなど
・他社と兼任しており「専任」になれない
※以前の会社で専任技術者として登録されており、その登録が外れていないなど
・名義貸し(実際には活動していない)と疑われる状況
※現在の最低賃金は1000円を超えてきている地域もあり、1か月の平均労働時間は160時間とした場合月給が16万円以上なければ外形的におかしい。さらに社保の事業主負担などを考えると18万5千円以上の支給額でなければ常勤性の担保は難しいと考えられるため、役員でもない限り5万や10万円の賃金では問題がある

財産的要件(自己資本の確認)
原則として「500万円以上の資金力」があることが求められます。これには以下のいずれかが必要:
預金残高証明(500万円以上)
純資産500万円以上の決算書(税務署受理済)
金融機関からの融資証明(融資可能性証明)
問題点:
・直近の決算で赤字/債務超過状態
※直近の赤字は問題なし。債務超過の場合、一般建設業であれば残高証明書などでも対応可能だが、特定建設業の要件の場合は増資するなどして要件を充足する必要あり
・現金はあるが証明書類が用意できない
※金融機関と相談の上残高証明書の発行を依頼。法人作成の上純資産500万円以上とする

営業所の実態確認
営業所が実際に業務を行っている場所である必要があります。
問題点:
・自宅兼事務所の場合、実態の分離が曖昧である
※平面図、賃貸契約書等で建設業の営業所を特定する
・賃貸契約が個人名義になっている
※転貸が認められているなら賃貸借もしくは使用貸借。転貸が認められていない場合は大家の使用承諾書などを準備
・そもそも事務所使用が認められていない
※住居用・倉庫用として借りていたり、そもそも建物が建てられない市街化調整区域などにコンテナハウスを置いたようなケースは建設業の事務所としては認められない

許可業種の選定と区分の理解不足
建設業許可には二つの一式工事と27の専門工事、合計29の業種があり、工事の内容により該当業種が異なります。
問題点:
・希望の業種の実務経験が認められない
※希望は土木一式工事がとりたいのに、用意できる証明書類ではとび・土工工事の実務経験しか認められないなど
・指定建設業(特定許可)との違いが分からない
※特定建設業においては指定建設業の専任技術者には原則実務経験者がつくことはできないが間違って実務経験+指導監督的実務経験で申請してしまった

行政書士に依頼するメリット
これらの「難関ポイント」を熟知している行政書士に依頼すれば:
・要件充足の可否を早期判断
※いくらほしい業種があっても要件が不足している場合許可には結び付きません。その場合は一刻でも早く他の要件で充足するか、経験を積み時期を待つかを判断することが大切です
・書類の不備・不一致を事前に防止
※一つの書類の中で不一致があると一気に所の申請書の信憑性が薄れてしまいます。そうならないためにも提出前に整合性のチェックが大切です
・経験証明や工事経歴の整理も代行可能
※申請を熟知している行政書士であれば、必要な工事経歴や実務の拾い上げが的確であり、行政窓口とあと何が足りないのかを正しく認識共有できるためスムーズな許可申請につながる
経営事項審査の各項目の評価ポイント

総合評定値(P)の構成
「総合評定値(P)」が最終的な企業の評価となります。P点を上げるためには、構成する各要素でスコアを上げることが重要です。P点の計算式は次の通りです。
P = 0.25X(経営規模) + 0.15Y(経営状況) + 0.20Z(技術力) + 0.25W(社会性等) + 0.15(評点調整)

【X】経営規模の得点アップの秘訣
内容: 完成工事高(直近2年)と自己資本額・職員数などを評価
高評価のコツ:
売上(完成工事高)を安定して確保する(特に直近2年が重要)
工事種別ごとに正確に分けて申告(許可業種と一致させる)
雇用する技術職員数・元請工事の比率も意識する
下請だけでなく「元請工事」実績を増やす

【Y】経営状況(財務内容)の評価を高めるには
内容: 財務諸表(貸借対照表・損益計算書)から安全性・収益性・流動性などを数値化
高評価のコツ:
流動比率を上げる(現金・売掛金を確保)
売上総利益率を改善(適正な原価管理)
債務超過を避け、自己資本を蓄積する
不要な借入は抑え、自己資本比率を高める
💡 税理士と連携し、経審を意識した決算書づくりが大切。だからこそ、建設業に強い税理士もしくは建設業に強い行政書士に依頼して税理士に経審対策を説明してもらう必要があります。決算期の変更や、会社分割などの事業再編もY点対策になります

【Z】技術力(技術者)の評価アップの秘訣
内容: 有資格技術者の人数・経験年数・主任技術者の配置状況など
高評価のコツ:
1級施工管理技士など、評価が高い資格者を増やす
※1級保持者は監理技術者証と講習の受講を忘れずに
常勤技術者としてカウントできるよう、配置計画を明確に
若手にも資格取得を促し、長期的に体制を強化
※カウントには経審の審査基準日の6か月前の前日からの所属が必要です。また、審査基準日にいればその後に退職しても技術者にはカウントされることから、入退社の日にちにも注意が必要です。
✅ 出向者や65歳未満の継続雇用者はカウント可能です。ただし要件がありますので、ご注意を。

【W】社会性等(法令順守・福利厚生)の評価を上げるには
内容: 法令遵守状況、保険加入、建設キャリアアップシステム(CCUS)登録など
高評価のコツ:
・雇用保険・健康保険・厚生年金の加入は必須
※現在においてはこれら保険制度の加入は許可要件となっており、加入していないと許可の維持にも問題が出かねませんのでうっかりなどが無いようしてください
・建退共にしっかり加入
※建退協は本来日雇いの方の退職金を貯める制度だったのですが、現在では日雇いの方が現場で働くことはかなり難しくなってきています。そのため、本来は対象外であるはずの正社員の方でも現場にかかわる方については建退協への加入が認められています。本来は正社員の方については中退共の加入が正しいのですが、退職金の加点と建退協の加点が分離されているため、建退協の加入がなければ点数上不利益を受けることとなるため、一人だけでも建退協に加入させるなどイレギュラーな対応をせざるを得ないのが現状です
・労災加入・就業規則の整備などもプラス要素
※ここでいう労災は法定外労災といって上乗せ労災です。死亡後遺障害と、後遺障害1から7級の労災事故で支給がされること、勤務中と通勤災害が含まれること、現場に入る全労働者が対象であることといった要件を充足すれば傷害保険などの場合も認められます。また、中退共の加入がなくても、就業規則で退職金の制度が整備されていればその部分でも加点があります
・ISO取得、CCUSに登録(企業・技術者ともに)、キャリアアップカードのレベルアップ、若年技術者の育成など
その他、W点には各種の加点が存在します。他の評価での努力ができない場合はW点の加点を探すほかありません

その他:評価を上げるための実務的な戦略
・書類の整備・保存を徹底(完成工事・実績を裏付ける資料)
※経営事項審査の受審時には工事経歴に記載した上位数件の工事の裏付け資料を求められることがあります。そのため契約書等の保管を徹底し、求められたらすぐに提出できるようしておきましょう。専業の行政書士なら行政が求めていなくとも工事名などに疑義があれば裏付け確認はすると思いますが
・年度の切り方を考慮(完成工事高が高い年に合わせて申請)
※工事完成基準で決算を組んでいる場合は、大きな工事が完成した場合、決算期の変更をすることで完成工事高を高くすることができます。入札先の格付け評価が毎年でなく、定期申請時の評価が継続するような場合はどの年度の経審で提出するかは戦略として大切になります
・入札戦略に合わせた許可業種の選定・実績づくり
※経営事項審査では業種の積み上げということが認められています。また、入札先において複数の業種で評価するといった評価方法を取っているところもあります
・行政書士と連携し、審査項目を意識した事業運営
※経営事項審査に詳しい行政書士を選ぶ必要があることは言うまでもありません
「経営規模(X)」をアップさせるための戦略

経営規模(X)とは?
X点は以下の2要素から構成されます:
完成工事高の評点(X1):過去2年間の工事売上高(できるだけ高い年を選べる)
自己資本額・職員数などの評点(X2):人員体制・資本の安定性など

戦略①:完成工事高(X1)を上げるための実務戦略
✅ 1. 元請工事を増やす
元請工事の完成工事高は評価が高い(下請より加点効果が大)
元請として小規模でも契約をとり、実績を積む
✅ 2. 工事種別の明確化(許可業種との整合性)
「土木一式」や「建築一式」など格付け業種の完成工事高を増やす
業種ごとに契約書や請求書に明記しておくと証拠になる
✅ 3. 実績が多い年度に審査を合わせる
経審では直近2年平均もしくは3年平均のうち「売上の高い平均方法」が選べる
→ 決算スケジュールや審査申請時期を調整し、有利な年度を選ぶ

戦略②:自己資本・人員体制(X2)を強化する方法
✅ 1. 自己資本を積み増す
役員貸付の回収、利益留保などで資本金・純資産を厚く
債務超過や利益剰余金マイナスは避ける
✅ 2. 常勤職員を増やす
直接雇用の常勤職員(特に技術職)が多いと加点
外注やパートは対象外 → 正規雇用(社保加入)を意識
✅ 3. 決算書を経審仕様に整える
決算報告書は「原価の部」や「人件費」の内訳が重要
税務会計と建設業会計は違いがある。組み替えることは適法。必要に応じて税理士に経審向け処理を依頼(公共工事参加を目的と伝える)
経営事項審査(経審)における Z点(技術力の評価)対策

Z点(技術力)の評価項目の構成
経営事項審査(経審)における Z点(技術力の評価) を高めるには、「有資格技術者の確保」と「技術者の経験年数」「専任性の証明」がカギになります。Z点は施工能力や技術者の質的体制を数値化した項目であり、公共工事において特に重視される要素です。
Z点は主に次の2要素から構成されます:
技術職員数(有資格者数・経験年数)
主任技術者・監理技術者としての配置状況(元請実績)

Z点を高めるための具体的な対策
①【技術者の資格を整備・強化する】
✅ 対策1:評価対象の資格を把握し、取得を促進
評価が高い資格(一部例):
1級施工管理技士(建築、土木、電気、管など)
技術士(建設部門等)
1級建築士
「専任技術者」または「監理技術者」になれる資格を優先
🔸 対策:
社員に資格取得を奨励(費用補助制度を整えるのも効果的)
若手社員にも「2級施工管理技士」の取得を早期に進める
②【専任性・常勤性の証明を徹底する】
✅ 対策2:常勤・専任技術者として適正に管理
評価の対象となるには、「常勤かつ専任」である必要がある
専任性が証明できない(専属外注・兼業など)場合は減点の恐れ
🔸 証明書類例:
雇用契約書、出勤簿、給与台帳、社会保険加入証明 など
→ 労務管理の実態と帳簿を一致させる
③【技術者の経験年数をしっかり申告する】
✅ 対策3:経験年数の正確な把握と証明
10年以上の実務経験(資格がなくても評価される場合あり)
経験内容を記録した「実務経験証明書」の整備が必要
🔸 注意:提出時に施工実績との整合性が求められる
→ 過去の工事経歴書、担当工事の一覧、現場日報などが裏付け資料として有効
④【建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用】
✅ 対策5:技術者のスキル管理にCCUSを導入
技術者のキャリア履歴を見える化し、審査時の資料とする
W点でのレベルアップ判定や導入工事の有無に関連する。現在では技術者としての経験の蓄積をCCUS現場でしか認めていないため、将来的には10年経験などにおいてもCCUSでの証明が求められる可能性がある

Z点加点に有利な「技術者配置と評価表」
区分 |
内容 | 評価される技術者 | 加点対象 |
技術者数 | 有資格者数・経験年数 | 1級施工管技士・技術士・10年経験者など | ○ |
常勤性 | 雇用実態に基づく勤務証明 | 社保加入・就業実態が必要 | ○ |
W点の対策について

W点の評価構成(概要)
W点(その他の審査項目の評点)は、建設業における社会的信用・法令遵守体制・経営の健全性などを総合的に評価する項目です。一度充足してしまえば点数の振れ幅は大きくありませんが、ペナルティや未対応があると減点されるため、油断せず確実な対策が求められます。

W点の評価構成(概要)
W点は主に以下の要素で構成されています
評価項目 | 内容 |
労働福祉の状況 |
労働保険・社会保険の加入状況 |
若年技術者の育成確保 | 若年技術者の育成と確保ができているか |
建設業退職金共済制度の活用 | 加入状況・履行証明書の提出 |
退職金制度の有無 | 自社制度としての退職一時金制度の整備、中退共等への加入 |
法定外労災の有無 | 上乗せ労災制度に加入しているか |
CPDによる継続学習 | CPD単位取得数 |
建設キャリアアップ(CCUS)制度 | 運用・登録状況、レベルアップ者の数 |
ISO、エコアクション21等 | 品質・環境・安全管理の認証取得 |
災害協定の締結 | 地方自治体などとの災害時の協力体制(災害応援協定を結んでいるか |
法令遵守の状況 | 営業停止、指示処分の有無 |
建設業経理の体制 | 監査の受審、経理事務士などの雇用 |
建設機械の保有 | 災害時に活用が期待される機械の保有を評価 |
青少年、次世代育成・女性活躍など | 国交省が推奨する取り組みの有無 |

社会保険等の加入状況(最重要)
✅ 評価対象の保険:
健康保険(協会けんぽや組合健保)
厚生年金
雇用保険
労災保険(特別加入含む)
🔸 加点されるには:
常勤役員・常勤従業員の保険加入がすべて完了していること
保険未加入のままでは加点されないだけでなく、減点の対象にもなります
🔸 証明資料:
保険加入証明書、納付書控え、加入台帳など
民間工事でも経審が必要な場合はある

民間工事でも経審が必要・有利になるケース
① ゼネコン・ハウスメーカーとの取引
大手建設会社(ゼネコン)や住宅メーカーは、安全・品質確保のために協力会社の経審結果を求めることがある
協力会や下請け登録の審査資料として「P点」を提出させるケースあり
特に都市部の現場では「一定のY点以上」など基準を設けている例も
📌 例:
「Y点が700点以上の企業を優先的に採用」
「経審点数がなければ新規登録不可」など

民間発注者(ビルオーナー・開発会社)の安心材料
資産規模の大きいオーナー企業は、施工会社の経営健全性や技術力を重視
経審の点数を示すことで、客観的な信頼性をアピール可能
Y点(財務健全性)
Z点(施工体制・実績)
W点(法令遵守、社会保険など)
📌 特に信託会社・REIT関連の案件では、経審の提出が条件になることもあります。

融資やリース契約の信用資料として
銀行やリース会社からの建設機材導入・運転資金調達の際に、経審の評定値が「信用力の証拠」になる
経審の結果は「公的な経営スコア」として使えるため、決算書だけでは測れない信頼性を補完
📌 実際に、金融機関が「P点が高いから安心」と判断する事例あり