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グループ会社の出向者の現場配置について

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2025/06/04

令和6年3月26日、国土交通省より「国不建技第291号」として発出された通知は、建設業における監理技術者等の雇用関係の明確化と合理化を目的とした重要な制度改正である。本通知は、出向社員に関する従来の取扱い(平成28年通知:国土建第119号)を一部見直し、企業集団内の出向社員が監理技術者等として適切に配置されるための新たなルールを定めたものである。建設工事において技術者の適正配置は、工事の品質確保と安全管理の根幹をなす。本章では、通知の趣旨と背景を解説する。

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目次

    現場配置技術者に求められる「直接的かつ恒常的な雇用関係」とは

    ~制度趣旨と違反時の罰則までを徹底解説~

    建設業において、工事現場には主任技術者や監理技術者といった「現場配置技術者」の配置が義務付けられています。これらの技術者は、施工管理、品質確保、安全管理といった建設工事の根幹を担う重要な存在であり、その能力と責任を十分に発揮するためには、配置元の建設業者との「直接的かつ恒常的な雇用関係」が前提とされています。

    この要件は建設業法により定められており、建設業者が技術者を形式的に在籍させたり、外部の人材を名義だけで配置するような「見せかけの体制」を防止するための仕組みです。本稿では、この「直接的かつ恒常的な雇用関係」が求められる理由と、違反が発覚した場合にどのような罰則が科されるのかを、制度の背景や具体的事例を交えて詳しく解説します。

     「直接的かつ恒常的な雇用関係」の定義

    現場配置技術者とは、建設業法に基づき、一定規模以上の建設工事において専任で現場に配置される技術者のことを指します。主に以下の3種類が存在します。

    • 主任技術者(一般建設業における配置義務)
    • 監理技術者(特定建設業における下請契約総額5,000万円(税込)以上の工事に配置義務)
    • 監理技術者補佐(技術者の補助的業務を行う者)

    これらの技術者は、現場での技術的指導や管理、発注者との折衝、安全確保など、工事の円滑かつ適正な実施に不可欠な役割を担います。したがって、企業は単に「資格を持つ人間」をそろえるだけでは不十分で、「自社の責任のもとで常時雇用されている技術者」であることが求められます。

     

    なぜこの要件が重要なのか

    「直接的かつ恒常的な雇用関係」とは、単なる契約上の在籍や書面による形式的なつながりではなく、実態として継続的にその建設業者に勤務し、日常的な業務指揮監督を受けている状態を指します。

    直接的とは:

    第三者(人材派遣会社等)を介さず、建設業者が当該技術者と直接雇用契約を締結していることを意味します。人材派遣や請負契約による技術者の配置は原則として認められていません。

    恒常的とは:

    単発の短期雇用ではなく、長期的・継続的に勤務しており、原則として雇用期間に定めがない状態。社会保険への加入や、就労日数・時間が一定していることなどが基準とされます。

    この関係が確認されることで、当該技術者が企業の責任の下で技術的責任を果たすことができる体制が担保されるのです。

    違反した場合の罰則とリスク

    現場配置技術者の存在は、建設工事の品質・安全・適正な工程管理に直結します。これら技術者が建設業者の実質的な管理下にないまま名義上だけで配置されていた場合、以下のような重大な問題が生じる可能性があります。

    • 不適切な設計・施工による品質不良
    • 安全管理の欠如による労働災害
    • 発注者との意思疎通の不備
    • 工期遅延や紛争の発生

    特に公共工事においては、国民の税金を使って行われる事業であるため、発注者である行政機関は配置技術者の適格性について極めて厳格な目を向けています。国土交通省の「建設業法令遵守ガイドライン」でも、雇用関係の確認書類(社会保険証、雇用契約書等)の整備が求められており、これらの実態が伴わない場合は、配置違反とみなされます。

    企業集団における技術者配置の緩和

    技術者の適正配置について、気軽に考えがちですが、技術者配置に関して「業種ごとの要件」や「直接的かつ恒常的な雇用関係」を偽って申請・配置した場合、建設業法第50条等に基づき、以下の行政処分・刑事罰が科される可能性があります。

    行政処分

    • 許可の取消(建設業法第29条)
    • 業務停止命令
    • 指名停止(地方自治体による入札除外措置)

    刑事罰

    • 6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金(建設業法第50条)
    • 両罰規定により、法人としての建設業者にも罰金が科されることがあります

    実務上のリスク

    • 公共工事からの排除、指名競争参加停止
    • 発注者からの信頼失墜
    • 元請業者との契約解除・損害賠償請求
    • 社会保険未加入による別途指導・是正措置

    特に近年は、社会保険未加入問題とあわせて、配置技術者の雇用関係の実態が各自治体・国土交通省によって厳しく調査されており、虚偽が判明した場合には即時に指名停止処分が下されるケースが増えています。

    制度遵守のために企業がとるべき対応

    現場配置技術者に関する制度を遵守するためには、次のような実務対応が重要となります。

    雇用契約書・社会保険の整備
     技術者との契約関係を明確にし、社会保険に確実に加入させる。

    出向契約書の明文化
     特例制度を利用する場合、出向元・出向先の責任分担や業務内容を明記する。

    施工体制台帳等への正確な記載
     現場配置技術者の氏名、配置期間、雇用関係などを台帳に反映し、監督官庁からの求めに即応できる状態を保つ。

    社内研修・周知の徹底
     現場代理人や人事担当者に対して、雇用関係要件に関する知識を共有し、制度違反の未然防止を図る。

    外部専門家との連携
     行政書士・社会保険労務士等の専門家と連携し、法令解釈や書類整備についての助言を受ける。

    関連する特例制度と注意点

    2024年3月26日付で国土交通省が発出した通知(国不建技第291号)により、親会社・連結子会社間での出向者を技術者として配置する特例的な取扱いが整理されました。これにより、一定の条件を満たせば「直接的かつ恒常的な雇用関係」があるものとみなされ、技術者配置が認められる場合があります。

    主な特例制度

    3ヶ月後等配置可能型:企業集団内での出向者が3ヶ月以上出向先で勤務すれば配置可能

    即時配置可能型:親会社と連結子会社間に限り、3ヶ月を待たず即時に配置可能(ただし下請関係がないこと等の条件あり)

    これら制度を利用するには、企業集団確認申請や出向契約書の整備、社会保険の加入確認、発注者との協議などが必要となります。制度の誤用や証憑書類の不備は、かえって違反行為とみなされる可能性もあるため、専門家の助言を得ながら慎重に対応する必要があります。

    施工体制の柔軟性と法令遵守を両立する ―「企業集団認定制度」の実務的意義とその運用

    建設業において、主任技術者や監理技術者の配置は、工事品質や安全性の確保において極めて重要な役割を果たします。これらの技術者は、建設業法に基づき、元請業者との間に「直接的かつ恒常的な雇用関係」があることが前提とされています。

    ところが、大手建設グループのように複数の建設業者をグループ会社として擁する企業体においては、技術者リソースをグループ内で効率的に活用したいという要請が強く存在していました。そこで登場したのが、「企業集団認定」という制度です。これは、ある条件を満たす親会社・連結子会社間での技術者の出向を、法的に適正な「雇用関係あり」として取り扱うための特例的な仕組みです。

    本稿では、2024年3月26日の制度改正前から存在していた「企業集団認定制度」について、その構造、運用実務、注意点を詳しく解説します。

    企業集団認定制度の背景と制度趣旨

    従来、建設業法は技術者の「直接的かつ恒常的な雇用関係」を厳格に求めてきました。これは、名義貸しや管理不在の施工を防ぎ、元請としての責任を全うさせるという制度的目的から来ています。

    しかしながら、大手企業グループにおいては、技術者を保有する特定の子会社が全グループに技術者を供給しているケースもありました。こうした実態に対し、すべての会社で個別に技術者を雇用させるのは現実的でなく、リソースの無駄を生みかねません。加えて、公共工事においても建設業法の配置要件を満たす形で技術者を効率的に配置できる仕組みが求められていたのです。

    この要請に応える形で制度上は、「親会社とその連結子会社間の出向社員」に限り、一定の条件を満たすことで「雇用関係あり」とみなす取り扱いが可能となる仕組みが設けられていました。ただし、この制度は国土交通省への事前確認(企業集団確認書の取得)を必要とし、提出書類や証明要件のハードルが極めて高かったことから、制度としての存在はあったものの、実務上の活用例はごくわずかであり、広く普及するには至りませんでした。

    制度の構成と適用対象

    制度の主な構成は以下のとおりです。

    • 対象企業:親会社とその連結子会社(いずれも建設業許可業者である必要あり)
    • 対象社員:上記企業間での在籍出向者
    • 必要条件:出向契約の締結、出向先での業務実態の確認、社会保険加入等
    • 対象工事:主に公共工事(ただし民間工事に準用する事例も存在)

    ここでいう「連結子会社」とは、会社計算規則第2条第3項第22号に規定された、親会社の連結財務諸表において連結対象となる子会社を指します。連結関係の証明には、有価証券報告書、連結計算書類、監査報告書などが用いられます。

    また、制度の適用を受けるには、国土交通省建設業課への「企業集団確認申請」を行い、「企業集団確認書」の交付を受ける必要がありました。この確認書は概ね3年間有効とされており、企業構成や出向形態に大きな変更がなければ再確認は不要とされていました。

    適用条件と留意点

    この制度を利用して出向社員を技術者として現場に配置する場合、以下の条件が必要でした。

    • 親会社または連結子会社間の出向であること
    • 建設業許可を有する企業間であること
    • 出向契約書があり、かつ実態を伴う勤務であること
    • 社会保険等に継続的に加入していること
    • 出向先が指揮命令権を有していること

    これらの条件を満たさない場合、たとえグループ会社間の出向であっても、「直接的かつ恒常的な雇用関係がある」とは認められず、配置義務違反となるおそれがありました。

    特に注意が必要だったのは、単なる「業務委託」や「人材派遣契約」に基づく技術者の利用は、制度の対象外であるという点です。また、出向元が発注者であり、出向先が元請であるような関係性(下請関係)も制度適用の対象外とされていました。

    企業集団確認申請の実務

    企業集団認定を受けるための「企業集団確認申請」は、国土交通省(本省)に対して手続きが必要です。

    企業グループによっては、複数の出向形態を持っているため、実際の契約内容が制度の趣旨に合致しているかどうか、法務・人事・建設部門が連携して確認を行う必要がありました。

    制度活用の実態と課題

    企業集団認定制度は、制度の存在こそ国土交通省の通知により整備されていたものの、申請の煩雑さや要件の厳格さから、実務上の活用例はごく限られており、実態としてはほとんど利用されていませんでした。また、公共工事における入札審査や監督官庁の理解も十分に浸透しておらず、制度を活用しようとしても現場対応で混乱が生じるケースが多かったため、多くの企業は現場配置に自社の直接雇用社員を充てる保守的な対応を取らざるを得なかったのが実情です。

    そんな状況から、制度運用に際しては以下のような課題も指摘されていました。

    • 企業集団確認の有効期間や更新ルールが明確でない
    • 対象が「親会社とその連結子会社」に限定されており、それ以外の関係会社(孫会社・兄弟会社など)は対象外
    • 出向形態の実態が多様化し、制度運用との齟齬が生じやすい
    • 地方整備局や自治体での運用基準のばらつき

    これらの課題は、2024年の制度改正により「企業集団」の定義が拡大され、制度の透明性や一貫性が向上する形で見直されることになりますが、それ以前の運用においては、慎重な書類整備と確認が必須でした。

    出向社員の監理技術者配置がより柔軟に!

    2024年「国不建技第291号」通知による制度改正の要点と実務への影響

    建設現場における主任技術者や監理技術者の配置には、建設業法上、「直接的かつ恒常的な雇用関係」が必要とされています。この要件は、名義貸しや責任の所在不明瞭化を防止し、技術者が自社の責任の下で工事管理を行う体制を担保するものです。

    しかし近年、大手建設グループにおける技術者の人材共有や流動的な活用が求められる中で、従来の「企業集団認定制度」(親会社とその連結子会社間の出向を前提に国交省の確認書を取得する運用)では、煩雑な手続と制度運用上の限界が指摘されてきました。

    こうした実務的課題を受け、2024年3月26日、国土交通省より新たな通知「国不建技第291号」が発出され、出向社員の監理技術者等としての現場配置を円滑化するための新制度がスタートしました。

    制度改正のポイント概要

    本改正により、「企業集団」内での出向社員の現場配置について、より明確かつ柔軟な運用が可能となりました。最大のポイントは以下の2点です。

    • 「企業集団」の定義と対象範囲の拡大
    • 出向社員を技術者として配置するための2つの運用モデルの導入

    企業集団の定義の明確化と拡大

    従来は「親会社とその連結子会社」のみを対象としていたところ、本通知により以下のように明確化されました。

    企業集団とは、「一の親会社」(会社法第2条第4号)およびその「連結子会社」(会社計算規則第2条第3項第22号)で構成される範囲を指す。

    ここで重要なのは、企業集団の構成会社間における下請関係の有無が、制度適用の可否に大きく影響するという点です。たとえば、出向先の企業が、出向元の発注工事を請け負っている(下請に入っている)場合は、制度の対象外となります。

    2つの運用モデル ― 即時配置型・3ヶ月後等配置型

    通知では、企業集団内の出向社員を現場に配置するための運用モデルとして、以下の2類型が導入されました。

    (1)即時配置可能型

    出向後、雇用期間を待たずに即日から配置可能とするモデル。利用には以下の条件が必要です:

    • 企業集団確認書の取得(従来の仕組みを踏襲)
    • 出向元・出向先間に下請関係が存在しない
    • 出向社員が出向先において実質的に勤務し、指揮命令を受ける体制にある
    • 出向契約書、雇用保険等の整備

    このモデルは主に、大手グループ会社間で即戦力人材を機動的に配置したい場合に有効です。ただし、制度運用の正確さが求められ、確認申請書類の提出も必須です。

    (2)3ヶ月後等配置可能型

    出向後、原則3ヶ月以上の雇用実績を経た後に、「直接的かつ恒常的な雇用関係がある」とみなすモデル。こちらは即時配置型よりも要件が緩やかです。

    • 出向先で3ヶ月以上の勤務実績
    • 社会保険の加入
    • 出向契約書や指揮命令体制の整備
    • 発注者に提出する必要書類の準備(施工体制台帳への記載等)

    公共工事の入札時点で雇用実績が不足している場合には利用できないため、入札日から逆算した人事配置計画が極めて重要です。

    必要書類と実務運用上の留意点

    通知には、実務に即した様式も添付されており、必要書類や説明責任の範囲が明確になりました。主な整備対象は以下の通りです。

    • 出向契約書(勤務実態や指揮命令関係を記載)
    • 雇用関係を証明する書類(社会保険、給与台帳、雇用契約等)
    • 「企業集団確認書」(即時配置型で必要)
    • 企業の連結関係を示す資料(有価証券報告書・監査報告書など)
    • 施工体制台帳、施工体系図への明記

    とくに注意が必要なのは、発注者から求められた際に即座にこれらの資料を提示できる状態にしておくことです。書類不備や不整合があると、「配置違反」とみなされ、指名停止や許可取消といった行政処分に発展する可能性もあります。

    制度改正の実務的意義と今後の展望

    今回の通知は、従来制度の硬直性や実務不適合に対する改善措置として、極めて実効性の高い改正です。特に以下の点で大きな進展が見られます:

    • 企業集団確認の様式明確化と有効期間の設定(3年間)
    • 柔軟な出向社員活用と法令遵守の両立
    • 発注者・監督官庁側の制度理解の促進

    従来の「企業集団認定制度」が存在していたにもかかわらず、ほとんど使われてこなかった最大の理由は、「制度の不透明さ」と「発注者・地方整備局の理解不足」でした。今回の通知はこの点を克服し、建設業者が安心して制度を活用できる法的根拠と運用マニュアルを提示しています。特に3ヶ月後等配置可能型に関しては、企業集団の認定も不要で、連結決算をしているグループ内であれば適用可能ということは画期的です。

    今後は、企業集団内での技術者の人材戦略に柔軟性が生まれる一方で、虚偽配置や制度の悪用が生じないよう、書類整備と社内教育の強化が必要です。特に監理技術者等の責任が重い工事では、配置要件違反が即時に重大処分へとつながるリスクがあるため、法令遵守と実務手続きの適正運用をセットで進めていくことが求められます。

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