建設業許可を取得するための完全ガイド:建築士のためのステップバイステップ
2025/04/05
建設業界で働く建築士の皆様にとって、建設業許可の取得はプロジェクト受注における重要なステップです。本記事では、このプロセスを細かく分解し、初めての方でもスムーズに申請できるようなガイドラインを提供します。建設業許可取得に必要な書類や申請手順、よくある質問についても詳しく解説し、皆様の不安を解消することを目指します。
目次
建設業許可取得の基本:建築士が知っておくべき初歩的な知識

建設業許可の種類とその違い
建設業許可には、大きく分けて「一般建設業許可」と「特定建設業許可」の2種類があります。一般建設業許可は、請負額が税込み500万円未満(建築一式の場合は1500万円未満)の場合に適用されます。一方、特定建設業許可は、大規模なプロジェクトで下請けに税込み5000万円(建築一式は8000万円)以上の工事を委託する場合に必要です。このような許可の違いを理解することは、プロジェクトのスムーズな進行に欠かせない要素です。両者の主な違いは、元請けとしての役割や契約金額の規模にあるため、プロジェクトの性質に応じた適切な許可取得が求められます。

建設業許可が必要な理由とそのメリット
建設業許可は、建築士としてプロジェクトを円滑に進めるために重要な要素です。その理由としては、設計者としての観点に加え施工業者としての観点でも工事全体を見ることになることができることから、信頼性の向上や競争力の強化が挙げられます。許可を取得することで、クライアントに対して施工もできる設計事務所としての姿勢を示すことができ、信頼性が増します。また、関与できる段階が増え、事業の拡大につながる可能性もあります。さらに、許可があることで金融機関からの融資も受けやすくなり、経営の安定化にも寄与します。

建設業許可の基本的な取得条件
建設業許可を取得するためには、いくつかの基本的な条件を満たす必要があります。まず、経営経験の証明です。経営業務の管理責任者として過去に一定期間の実務経験が求められ、この経験は適切な書類で証明する必要があります。次に、資格要件として、営業所には必要な技術者が在籍していることが求められます。しかし建築士の方の場合は自身がいることでその要件はクリアできることからその心配はありません。また、財務基盤も重要です。一定の資本金や純資産額を維持することが求められます。加えて、社会保険への加入も義務付けられており、これを怠ると許可が下りないことがあります。

建築士として知っておくべき法的要件
建築士として活動する際に知っておくべき法的要件は多岐にわたります。まず、建設業許可とは別に、建築士法に基づく設計事務所としての登録が必要です。この登録により、建築設計や工事監理の業務が可能となります。また、業務を行うにあたり、建築基準法や都市計画法との適合性を常に確認しなければなりません。さらに、契約時には、重要事項説明書や契約書の作成と説明が求められ、これには消費者契約法も関わります。これら法的要件を遵守することで、信頼性の高い業務運営が可能となり、許可取得後のトラブルを未然に防ぐことができます。

建設業許可に関連する主要な法律
建築士として活動するうえでは、関連する法律を理解することが重要です。代表的な法律として、建設業法があります。この法律は、建設業の適正な運営を目的とし、許可の取得、業務の遂行、そして品質保証に関する基準を定めています。また、建築基準法は建築物の安全性を確保するための法律であり、建築士として設計に携わる際には必須の知識です。さらに、労働基準法や安全衛生法も建設現場における労働者の安全と健康を守るために理解しておくべき法律です。これらの法律を熟知することで、法律違反を避け、信頼できる事業運営を実現できます。

許可を受けた後の法令遵守の重要性
建設業許可を取得した後も、法令遵守は非常に重要です。まず、許可を維持するためには、定期的な更新手続きが必要です。更新申請を怠ると、許可が失効します。また、許可を受けた建設業者は、変更があった場合には速やかに変更届を提出しなければなりません。さらに、建築基準法や労働基準法に基づく業務遂行は、品質を保証し、事故を未然に防ぐための基礎となります。法令遵守は、信頼される企業としてのブランドを築くうえで不可欠です。
これらを怠ると、建設業の不許可要件となる「請負工事に関して不誠実な行為をするおそれが明らかな者」や「過去において一定の法令の規定に違反した者等でないこと」を満たさないとして不許可になる可能性がないとは言えません。
建設業許可申請に必要な書類を徹底解説:建築士のためのガイド

申請書類の種類と準備方法
建設業許可を取得するためには、準備すべき申請書類の種類を把握することが重要です。主な書類には、建設業許可申請書、工事経歴書、財務諸表、そして経営業務の管理責任者の要件を充足していることの証明や技術者の資格証明書が含まれます。特に注意すべきは、各書類に必要な詳細情報を正確に記入することです。行政書士に依頼をすることで、書類の不備や記入ミスを避けることができます。申請書には押印が不要ですが、当事務所では依頼の確認のために押印をいただいております。

実務経験証明書について
許可を取ろうとする建設業の業種に建築士の資格で取得できない業種がある場合、その業種に応じた施工管理技士などの有資格者がいる場合は別ですが、そういった資格者が社内にいない場合には一定の実務経験を満たしたものが必要になります。その場合には、実務経験証明書によってその要件を証明します。この証明書は、証明される技術者の実際の業務経験を当時勤めていた会社などに証明してもらう形式で作成されます。
押印の廃止に伴い当時の会社などに連絡等しなくても書類自体は外形的に作成が可能になりましたが、その内容を証明する資料の準備や疑義があった場合には証明者である過去の勤め先などに問い合わせが入ることもありますので、十分に意思疎通をしておいてください。
実際には関与していない工事の記載をしたとして大手グループ会社が営業停止などの処分を受けたことが過去には多々あります。外形だけ整えればいいという考え方をするような行政書士への依頼はリスクしかないのでご注意ください。

建築士が施工管理技士を取る意味
建設業許可を取得するためには、技術者の在籍が必要不可欠です。木造建築士であれば大工工事業1業種の、2級建築士であれば建築一式工事業、大工工事業、屋根工事業、タイル・レンガ・ブロック工事業、内装工事業の5業種。1級建築士であれば上記にプラスして鋼構造物工事業の6業種の許可が取得できます。
建築士の場合は建築士法という法律に従って認められる資格ですが、建設業法の場合は施工管理技士という資格があり、建設業の許可を取得するうえでは実は施工管理技士のほうが多くの業種に対応しています。
例えば1級建築施工管理技士の場合は、建築一式工事業、大工工事業、左官工事業、とび・土工工事業、石工事業、屋根工事業、タイル・レンガ・ブロック工事業、鋼構造物工事業、鉄筋工事業、板金工事業、ガラス工事業、塗装工事業、防水工事業、内装工事業、熱絶縁工事業、建具工事業、解体工事業となんと17業種の取得が可能になります。
さらに施工管理技士を取得すれば建築学の指定学科卒とみなされるため、管工事業、水道施設工事業、清掃施設工事業、機械器具設置工事業、消防施設工事、造園工事業の実務経験に必要な年数が短縮されます。
既に建築士の資格をお持ちの方であれば、ぜひ取得を目指していただければと思います。

契約書締結の重要性
建設業許可を取得する際には、過去の建設業の経営経験や工事実績を証明する必要があり、その証明書類としては建設業法に定めがある契約書があげられます。
建設業法には「建設工事の請負契約の当事者は、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない」と定めがあります。
ここには「請負契約の当事者」とあることから許可業者はもちろん許可を持たない業者や許可が不要な請負工事にも適用があるため、本来は新規の申請時に契約書を交わしていないから証明するものがないというのは、「私は建設業法違反をしていました。」と言っているようなものです。
だからこそ、許可の取得を将来考えるかどうかにかかわらず、建設工事の請負をするのであれば契約書を交わすということを意識してください。
建設業許可を取得するためのステップバイステップガイド:計画から申請まで

初めての建設業許可取得計画
建築士として建設業許可を初めて取得する際には、欠格要件に該当しないこと、建設業の経営経験などが証明できるのであれば比較的簡単です。というのも既に建築士という技術者要件はクリアしていることから、大きなハードルを一つ飛び越えていることになります。
とはいえ全く計画が不要かといえばそうではありません。資本金などで資産的要件を充足していない場合は残高証明を取る必要があることから、残高が要件を満たすのはいつか?証明書が手元に来るのはいつかなど金融機関に確認しておかなければ申請時に残高証明書が間に合わないといったことや、身分証明書や登記されていないことの証明書、登記簿謄本などの証明書類の有効期限なども管理しておかなければ思わぬ失敗をする可能性があります。
そうならないために、手引きや窓口などで必要な書類とそれを取得するのにかかる期間、入手先などの情報をまとめておきましょう。
許可に詳しい行政書士に依頼することで、それら期限管理や、手引きの読み込み、窓口担当者とのやり取りから解放されます。

必要資料の収集スケジュール
建設業許可を取得するには、多岐にわたる資料の収集が必要です。その中でも、時間がかかることがあるのが、身分証明書です。一般的に身分証明書といえば、免許証やマイナンバーカードを思いうかべると思いますが、ここでいう身分証明書というのは本籍のある役所で発行される行為能力に問題がないという証明書です。現在はマイナンバーがあれば住民票や戸籍謄本は近くのコンビニで取得が可能ですが、身分証明書についてはその限りでないため、郵送で取得の場合、遠方の役所であれば2から3週間かかるようなこともあります。
また、納税証明書についても、納税してすぐには支払い完了のデータが回っていないため納税証明書の取得に手間取ることも考えられます。
残高証明書についても金融機関によっては請求から1から2週間かかる場合もある上に、納税証明書の有効期間は1ヶ月(兵庫県の場合)であることからこれら資料の有効期間も考え余裕のあるスケジュールを立てることが大切です。
先ほど書いたように、関係機関からの取得が必要な書類に関しては、時間がかかることが多いため、早めの手続きを心がけましょう。これらの資料の収集がスムーズに進むことで、建設業許可の申請が効率的に行えます。

書類作成を円滑に進める方法
建設業許可を取得する際、書類作成よりも要件面の準備が多くの方にとって難関となりますが、ここではそのプロセスを円滑に進めるためのポイントを解説します。まず、必要な書類のリストを作成し、各書類の有効期限を把握しておくことが重要です。次に、書類の記入には細かい要件があるため、行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。特に注意すべきは、許可の要件に関する部分が不明瞭であれば、許可申請の遅延を招く可能性があることです。正確で詳細な情報を提供することで、スムーズな申請プロセスが実現します。また、最新の申請ガイドラインを確認し、必要な条件を満たすことも重要です。申請前に書類を複数回チェックし、不備がないか確認することで、最終的な提出までの流れが円滑になります。

申請手続きの流れと注意点
建設業許可の申請手続きは段階的に進みますが、その流れを理解することでスムーズな許可取得が可能になります。まず、必要書類の収集から始まり、それらを整理して申請書を作成します。書類が整ったら、許可行政庁の担当窓口に提出することになります。この際、各自治体によって必要書類や審査基準に差異があるため、事前に詳しく確認しておくと良いでしょう。さらに、提出したものと同じものを手元に保管し、後の審査状況の確認に備えておくことが重要です。審査は通常数週間から数ヶ月かかり、追加資料の要求がある場合もありますので、迅速に対応できるよう準備を整えておくことが肝要です。申請手続き全体を通じて、正確な情報提供と迅速な対応が、許可の円滑な取得に繋がります。
建設業許可取得で事業を次のステージへ:建築士の未来を切り開く

建設業許可による新しいビジネスチャンス
建設業許可を取得することにより、建築士は新たなビジネスチャンスを開拓することが可能になります。許可を持つことで、工事のプロジェクトの中で関与する範囲も広がります。これにより、幅広いクライアントに対して多様なサービスを提供することが可能となり、ビジネスの成長が期待できます。また、許可取得によって信頼性が向上し、市場での評判も向上するため、新たな取引先との関係構築が促進されます。

建設業界におけるイノベーションの追求
建設業界は急速に進化しており、建設業許可を取得した建築士にとって、イノベーションは欠かせない要素となっています。新技術の導入やスマート建設技術を駆使することで、効率性や安全性が向上し、競争力が強化されます。例えば、BIM(ビルディングインフォメーションモデリング)を活用することで、設計から施工までのプロセスを一元管理し、コスト削減と品質向上が期待できます。さらに、持続可能な建築材料の使用やエネルギー効率の高い設計は、環境への配慮と共に、社会的評価の向上にもつながります。建築士は、常に革新の精神を持ち、柔軟な発想で新しい技術や方法を取り入れることが重要です。